NYから日本を考える NYで働く

アメリカの会社が求めている人材

今日は、私がNYに来て間もない頃に語学学校でできた友人たちと久しぶりの再会。学校へ行くため、旦那さんの転勤で、駐在で、等々、それぞれの想いでNYにやって来て、目的を達成してNYを離れて行く人の数は後を絶ちません。私がNYに来て間もない頃にできた日本人の友人は、もう数えるほどしかNYに残っていません。そんな人の入れ替わりが多いNYで、あれから5年経った今でも当時の友人たちとこうして会えるのは奇跡に近いです。

集まったメンバーは、韓国人、中国人、カザフスタン人、そして日本人の私。海外で暮らしているので、お互いに皆自分の国以外のことに興味を持っていて、話題は自然とそれぞれの国の事情へと及んでいきました。

そして、中国人の友達が不思議そうに私に尋ねたのは、「日本では、同じ会社に居続けるって本当?」という疑問。日本でも、昔よりは転職する人も増えてきたと思いますが、キャリアアップのための転職が広く普及しているアメリカと比べると、日本の労働市場ははるかに硬直化していると思います。また、中国でも転職は社会で広く受け入れられているので、一つの会社に献身的に勤務する日本の労働スタイルは不思議に映るようです。

その背景は色々あると思いますが、一番大きな理由は、「会社が雇用者に求めていること」の違いだと思います。この議論をするときによく言われるのが、日本企業ではgeneralist(どこでも通用する一般的な能力を持っている人)を求めているのに対して、アメリカ企業はspecialist(専門能力を持っている人)を求めている、という根本的な違いです。

日本では、医者や弁護士といった一部の職業や中途採用を除き、就職するときに、職種を選ぶことはできません。大学の専攻や本人の希望は二の次で、会社側が決めた部署で社会人生活をスタートすることになると思います。そして、長い年月を経て、社内で様々な部署を経験し、少しずつ昇進をしていく、というスタイルが一般的です。誰にでも得意不得意があるし、好き嫌いもあるので、本人が本当に働きたい部署で働く、というのが最も理想的で理にかなっていると思いますが、会社のことを色々な角度から知ることを求める日本では、そうした発想は受け入れがたいのが現状だと思います。さらには、会社から転勤を命じられれば、どんな事情があれ、行かなくてはいけません。

私はそんな日本の労働スタイルに以前から疑問を持っていましたが、アメリカの事情は日本と大きく異なることを、実感しています。

アメリカで一番重視されるのは、「何ができるのか」、「どんな能力や技術を持っているのか」、ということ。そのため、履歴書でも、そうしたこと以外の情報は全く問われないのです。(アメリカの履歴書事情については、こちらこちらからどうぞ)

そして、たとえ新卒採用であっても、会社側が一定数の新人を採用し、配属を決めるということはありません。会社は採用活動にあたって、新卒、中途を問わず、職位や職務内容、求めている能力を明確に公表しています。そして、採用の過程で会社は、応募者の過去の経験(大学での勉強や今までの仕事での経験)がいかに会社が求めている人材と一致しているかを問いてきます。そのため、日本式の色々な部署での経験があるということよりも、特定の分野で専門技術や能力を磨き、多くの経験を積んできた、ということが高く評価されます。

日本では、「出る杭は打たれる」という表現に象徴されるように、みんなと同じであることが良しとされますが、アメリカでは、他人と違う独自性があること、つまり、杭は出れば出るほど、価値が高まっていくのです。

自分が持っている技術や経験が会社側と一致すれば、会社もそうした人材を欲しいと思うので、転職も日本よりはるかにしやすく、また、労働者側も、自分が持っている技術を会社に提供している、という意識で働いているので、自分が求める環境が今の会社で得られないと思うとすぐに転職するし、別の会社が自分をより高く評価してくれると思えば、そちらへ移っていくのです。

次回は、アメリカでの就職活動の実態、そして就職活動のポイント、日本人がネイティブと仕事で渡り合っていくにはどうしたら良いか、を考えてみたいと思います。


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