NYに住む

NYで築く本物の人間関係

振り返ってみると、たった8年間のNY生活の中では、数え切れないほどの出会いと別れがありました。NYという土地柄、永住するつもりで来ている人ばかりではないので、仲良くなっても、学校を卒業したり、旦那さんの駐在の任期が切れたりといったライフスタイルの変化で日本へ帰って行く人は多いですし、色々な事情でNYを離れてアメリカ国内の他の都市へ引っ越す人もいますし、また、中には突然音信不通になって消えて行ってしまった人もいます。

NYは人の動きが早いので、長く付き合える良い友人を作るのが難しい都市ともよく言われます。そんな都市で、時間をかけて、何もないところから少しずつ人間関係を紡いでいって、素晴らしい友人や知人ができたことは、私の一生の財産です。

東京での社会人生活に終止符を打って渡米した最初の1年は普通の語学学校生だったので、日本人が自己紹介の時に必ず渡す名刺もありませんでした。大学院やMBAで華やかな学位を目指している人や、アメリカ企業でばりばり働いている人の傍らで、私はただ英語の勉強をしているだけだったので、これといった肩書も全く、それでも、NYで働くという夢を持ち合わせているという状況でした。同じ日本人でも、そんな私を応援してくれる人もいれば、不思議なことをしている人がいるなぁといった感じで見ているような人もいました。

私自身のNY生活は何もないところからスタートしているので、私も初対面の人の肩書や職業はあまり気にならず、国籍や年齢を問わず、どんな人にも同じように接しているのですが、NYのように人種のるつぼのような都市でも、そういう人ばかりではなく、近所のカフェの共同経営者のおじさんは、接客業で苦労しているそうです。ホスピタリティー精神にあふれたアットホームなカフェですが、特に名が知れたわけではない小さな小さなカフェなので、お客さんによっては、カフェのオーナーのことを下に見てひどい対応をすることがあるようです。アラブ民族が基盤のアルジェリアでは、その後のフランスによる植民地時代の影響で、学校は午前中はアラビア語、午後はフランス語で授業が行われてるため、学校に行けなかった年配の世代を除いた国民のほとんどはアラビア語とフランス語が堪能です。そのアルジェリア人のオーナーがある日フランス語で話しているのを見たあるお客さんは、その日から手のひらを返したように対応が変わったそうです。それまでは、名もない国からの移民と思っていたようですが、フランス語ができるのできちんとした人だと見方を変えたようです。

母国のアルジェリアは仲間を助け合うお国柄だからと、私にはいつも親切で、最近は何も言わなくても私が好きなturkish coffeeを淹れてくれ、サンドイッチやお菓子をごちそうしてくれるフレンドリーなオーナーなのですが、半分ぐらいのお客さんはオーナーに失礼な対応をするようで、そういう人たちとは、ちょっとした会話すらもしないそうです。

日本では大人になってから知り合う人との間では、まずどんな仕事をしています、といった話から入り、お互いにさり気なく肩書を確認していることが多いかもしれませんが、NYでは、このアルジェリア人のオーナーのように、私が一体どんな仕事をしているのかすら知らない場合もあります。
あなたは初めてこのお店に来た5年前から僕への対応が良いお客さんだったから、と言って、今ではアルジェリア流ホスピタリティーでもてなしてくれるのはありがたいですが、そのおじさんとの会話から、人間関係の本質を再確認したような気がします。

*写真は、NYでついに見つけたバンクシーの作品。数年前に、バンクシーはNYでゲリラ的に創作活動をしていて、街のいくつかの場所に作品を残しました。これは、その作品の1つ。この作品は、ユダヤ人が経営するNYの人気スーパーZabarsの近くにあり、Zabarsが保存のために尽力しているようです。
バンクシーのプロフィールはこちらからどうぞ。


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