大統領選挙の結果に、NYで暮らす一移民として思うこと

衝撃の結果で幕を閉じたアメリカ大統領選挙。

ヒラリー、トランプ両候補のお膝元であったけれど、リベラルな知識人が多いNYはヒラリー派ばかりだったので、選挙の翌日以降は街全体がどんよりとし、毎日皆その話でもちきりです。その様子を、まるで「ヒラリーのお葬式のようだ」と表現した人がいるようですが、的を得た表現だと思います。

 

アメリカ市民にしか持たない投票権。そのため、ビザやグリーンカードで暮らす移民たちは、ワシントンDCに声を届けることはできません。

NYで暮らす1人の移民として、今回の選挙結果を見て感じたことを備忘録として記したいと思います。

 

・今回の選挙は、「消去法の選挙」と言う人も多くいました。どちらの候補も決定的に良いわけではない、と思っていた人が多いからです。実際、スイングステート(スイングとは揺れるという意味で、民主党と共和党どちらにも揺れうるため、選挙結果に大きな影響を与える州)ではかなりの接戦も見られ、最後までなかなか結果が出ませんでした。しかし、結果的には、保守派層が多いと言われる中西部やバイブルベルトは、トランプ氏の圧勝でした。政治手腕や知識レベル、リーダーシップ、あらゆる点でヒラリーさんがトランプ氏を大きく上回っていることは誰の目にも明らかだったと思うのですが、一体どんな人たちがトランプ氏に投票したのでしょうか。それは、普段表に出ることのなく、日々の生活に困窮した声なき市民たちだったのです。今回の選挙結果を受けて、こうした人たちがどれだけいたか、そして、その人たちがどれだけ変化を求めていたか(彼らはトランプ氏を完全に肯定しているわけではなく、今の流れを汲むヒラリーさんが嫌だったのです。)、ということが浮き彫りになりました。

・そうしたトランプ支持派は、たとえば、機械化やインドやメキシコ等の安価な地域へのアウトソーシングが進み、長年働いてきた工場での職を失ってしまったり、優秀な移民たちに太刀打ちできず、解雇されたまま仕事が見つからない人たちだったりします。こうした人たちにとって、「かつての強いアメリカを取り戻す」と製造業復活を訴えたり、「メキシコとの間に国境を作り、その費用はメキシコに負担させる」とアンチ移民の立場を明確にしているトランプ氏は魅力的に見えたのです。しかし、コスト削減の流れが進み、各国が安価な労働力の国で生産を行っている現状で、雇用を回復するために、アウトソースしていた事業をアメリカに戻すことは、アメリカの製品の国際競争力を失うことになり、現実的ではありません。また、アメリカの社会は移民で成り立っていることは無視できません。トランプ氏が嫌っている不法移民が安価な労働力を提供してくれるからこそ、レストランは現状の値段を維持できているし、ゴミ収集やビルの清掃のような誰もがやりたくないような仕事を不法移民が引き受けてくれているからこそ、私達の生活は成り立っているのです。そうした人たちを「不法移民」だからというレッテルを張って追い出してしまっては、アメリカ社会は破綻してしまうでしょう。トランプ氏支持派が変化を求めているのは分かりますが、果たして、現実的な政策もなく現状批判をしてきたトランプ氏に投票することが、その答えだったのでしょうか。ヒラリー派の人たちは、こうした困窮した市民たちの声を今まで真剣に受け止めてこなかったかもしれませんが、貧富の差がこんなにも広がってしてしまっているアメリカ社会で、トランプ氏に投票した声なき市民たち(たぶん彼らは、数年前のoccupy wall streetのデモに参加していた人たちと同じ人たちでしょう。)も幸せな生活を送れるようにするにはどうしたら良いでしょうか。なかなか深い問題だと思います。

・トランプ氏は、選挙中しきりに「みんなの負担ばかりが増しているオバマケアを撤廃する」と言っていましたが、先日のオバマ大統領との90分に及ぶ会談で、オバマケアの良い点に気づいたようで、完全撤廃という当初の案は撤回するようです。選挙公約を早くも破ってしまう結果になりそうですが、では、選挙中のに豪語していた数々の公約は一体なんだったのでしょうか。

・オバマ大統領は、アメリカの歴史に残る数々の制度を打ち出してきました。オバマケア、同性愛結婚(州レベルでは認めていないところもありますが、連邦政府レベルでは合法なのです。)等々。トランプ氏の就任により、保守派共和党の支配が強まり、この8年間の努力がひっくり返されてしまったら、とヒラリー支持の多いNYの人たちは戦々恐々としています。

・選挙人制度がとられているアメリカの選挙では、州ごとに割り当てられた選挙人を過半数獲得した人が勝利する仕組みとなっています。投票は各州ごとに行われ、それぞれの州で最も票を獲得した候補が、その州の選挙人をすべて獲得する仕組みとなっています。そのため、トランプ氏は、絶対に負けることが分かっている東部と西部の沿岸沿いの州にはあまり力を入れず、スイング・ステートでの遊説活動に熱心だったようです。ヒラリー氏は、重要なスイング・ステートでの選挙人を落としてしまったことが敗戦につながりましたが、総得票数ではヒラリー氏のほうが30万票ほど多かったそうです。さらには、選挙権を持たず、アメリカで幸せに暮らしている移民たちもヒラリー派が多かったはずなので、全国民で見たら、ヒラリー氏支持のほうが多かったという皮肉な結果となりました。

・投票日の1,2週間前に、いったん解決したはずのヒラリーさんのEメール問題で新事実が見つかったとして、FBIが再調査を開始しました。最終的には投票日の数日前に、問題はなかったとの結論が発表されましたが、これにより支持率が下落したヒラリーさんは、この件を敗因の一つとして挙げたそうです。そこまでしてFBIが捜査をしたかったのは、一体どんな事実だったのでしょうか。投票直前に問題ないという結果は公表されたものの、タイミングから考えて、この結果自体にはヒラリーさん側からの大きな圧力があったのでしょうか。

・マイケル・ムーア氏は、独自の調査結果と考察に基づき、4ヶ月前に既にトランプ当選を予期していたそうです。彼自身は反トランプ派で、5番街のトランプタワー前でのデモに今日は本人も参加したそうです。そのマイケル・ムーア氏は、トランプ政権は4年持たないことを早くも予言しています。トランプ氏の何らかの行動が訴追されることになる等、大統領を継続できないような事態になる、と話しているのです。その予言は果たして当たるのでしょうか。

 

全世界が注目したアメリカ大統領選挙の衝撃は、当分消えることはないでしょう。

一度決まってしまった事実は変えることはできないので、毎日を大切に、楽しく、そして自分にできることに全力で取り組んで生きていく、ということが今求められていることなのだと思います。

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