Harvey Weinsteinニュースの余波

今朝からアメリカは、Matt Lauerさんのニュースでもちきりです。
最初名前を聞いたとき、誰だろう?と思ったのですが、顔を見たらすぐに分かったこの方は、NBCというアメリカを代表するテレビ局(フジテレビのようなイメージ)の朝のニュースの看板キャスターのおじさんです。

ウィキペディアより。

平日に毎朝アメリカのリビングルームでその顔が流れ、丹精な顔立ちと落ち着いたキャラクターで人気を博していた看板キャスターは、今朝、いつも通り朝のニュースに出演するために出勤したところ、朝4時に解雇を言い渡されました。他の番組出演者たちには、動揺しないように、7時に番組が始まるたった数分前まで伏せられていたそうです。

アメリカの芸能人にも有名人にも疎い私でも知っているこの方は、私がニューヨーク生活に慣れ始めた頃、英語の勉強のためにと毎朝見ていたニュース番組のキャスターで、もちろん会ったことはありませんが、私にとって馴染みのある方でもあります。

ご自身のtwitterより。

その方に一体何があったのでしょうか。全ての事の発端は、日本のニュースでも大きく報道されていたHarvey Weinsterinのセクハラ疑惑に遡ります。
その後、映画界の人だけでなく、テレビのキャスター等、アメリカのメディア界を引っ張ってきた多くの人たちにもセクハラ疑惑が次々と持ち上がり、数日に一人という驚くべき頻度で、有名人が次々と加害者としてニュースに登場してきました。
そして、極めつけは、Matt Lauerさん。アメリカのニュースキャスターの巨塔の一人で、アメリカ大統領へのインタビューやオリンピック中継のメインキャスターを何度も務め、その他、つい先週のサンクスギビングの代名詞とも言えるMacy’sが主催するパレードの実況中継も1998年から担当していたベテランキャスターに、一体何があったのでしょうか。

報道によると、2日前の11月27日にNBCの女性職員が、Mattから長年に渡ってセクハラ被害にあってきたことをNBCの幹部に告げ、そこから直ちに始まった調査で、この件以外にも複数の疑惑が浮かび上がり、今回の決定に至ったそうです。

Harvey Weinsteinに始まる一連の騒動は、色々謎めいた点も多いです。
Harvey Weinsteinのセクハラ疑惑は、業界関係者の間では有名だったものの、なぜ何十年も封印され続けられてきたのでしょうか。そして、なぜこのタイミングで公にされたのでしょうか。

Harveyの場合は、映画制作者という彼の肩書とそのあまりにも強い権力から、駆け出しの女優さんたちが、自分の仕事がなくなってしまうのを恐れて泣き寝入りしてきてしまった、というのは納得がいきますが、NBCのような大手テレビ局の内部で起こっていたセクハラ疑惑は、なぜ今まで封印されてきたのでしょうか。NBCのようにしっかりした会社であれば、従業員による匿名のホットラインのような制度もあったでしょうし、人事部も大きな力を持っているはずです(アメリカの人事部は、日本企業の人事部と比較して、総じてかなり社内での力が強いです。)。ソチオリンピックの頃から始まったと言われているMattによるセクハラの被害者は、匿名という形でも過去にこの件をNBCの幹部に伝えることはできたはずですが、現時点での報道では、過去にそうした動きがあったとの報道はありません。善悪がかなりはっきりしているのがアメリカ社会の特徴ですが、長いものには巻かれるの原理で、相手の男性があまりに有名人だったり力がある人だと、会社側も男性を守ろうという動きになりがちで、女性側は、自分の訴えは跳ね返されてしまうと思い、ずっと今まで我慢し続けてきたのでしょうか。
しかし、こうして名乗りを挙げるまで何年間もの間、MattにNoと言うことはできなかったのでしょうか。

私がアメリカ社会の仕組みについて知らない部分が多いために、こんなにも女性たちが強くて自分の意見を主張する国で、泣き寝入りがあることに驚いていますが、私の疑問は何かの機会に、アメリカ人の友人に聞いてみようと思います。

NBCニュースでMattと長年タグを組んできた女性キャスターは、今日、この件について、昨日までMattと一緒に出演していた朝のニュース番組でコメントを発表しました。突然のことに動揺が隠せない様子で、Mattのことをdear friendと呼び、仕事の上でも尊敬していたことが伝わる内容だっただけに、皆が衝撃を受けています。

今回の件で驚くのは、NBCの対応の早さです。月曜日に発覚した件が水曜日早朝には解雇という事態へと発展。しかも年収20億円と言われる看板キャスターです。日頃思うのですが、アメリカ人の思い立ったときの行動力には目を見張るものがあり、ほぼ1日半から2日という短い間に解雇するに足る証拠を集めてしまいました。
これがもし日本で起こっていたら、こんなに早くこうした形での決着を迎えていたかしらと、ふと思いました。

ニュースキャスターの英語はそれなりのテンポはあるものの聞き取りやすく、私のリスニング力の手助けをしてくれていた方が、こうした形で、自らの手で自ら築いてきたキャリアを棒に振ってしまい、一瞬にして第一線から消えてしまったのは、とても残念です。

*Weinsteinの件については、アメリカ事情に詳しい日本の友人が教えてくれたこちらの記事が、鋭い考察力で読み応えがあります。

日本人に足りないある発想

つい先日、私よりもニューヨーク歴がはるかに長く、あらゆる面で私が頼りにしているすてきな日本人女性の方と話していて、二人で一致したのが、日本人がアメリカ人に比べて著しく劣っているある発想についてです。

それは、「自尊心」(英語で言うとself esteem)。

謙遜が美徳とされ、出る杭は打たれるということわざが示しているように、人より何かで少しでも目立ってしまうと叩かれてしまいがちな日本社会では、自尊心を高く保つことは、かなり難しいのではないかと思います。「いえいえ」「大したことありません」なんて言う言葉で、ついつい謙遜してしまいがちです。

それに対して、基本的に「自分が大好き」な国民性のアメリカ人。日本人とは真逆で、最初は戸惑うこともありましたが、基本的に自尊心が高い人ばかりのアメリカ社会では、逆に、低い自尊心を出してしまうと、自分自身が損をしてしまったり不都合が生じることがあり、英語を話している時には、基本的に自尊心を高く保つようにしています。

例えば、日本でよく日米の文化の違いとして挙げられるお土産の渡し方も、日米での自尊心の違いを表している良い例だと思います。自尊心の高いアメリカ人であれば、自分が相手のために素晴らしいお土産を選んだのだから、相手も喜ぶに違いない、という発想が根底にあり、「あなたにぴったりのお土産を見つけたんだけど、どうぞ。」なんて言って手渡します。それに対して、全く同じような状況で、相手のために時間や労力をかけて探したお土産でも、日本人であれば、「つまらないものですが」、そして、食べ物であれば「お口に合うか分かりませんが」と枕詞を添えて手渡すことが一般的だと思います。

これはあくまでちょっとした一例でしかありませんが、アメリカで暮らし始めて最初に感じる戸惑いやちょっとした違い、すれ違いは、自尊心の高さが相手と極端に異なるからなのではないかと最近は思います。

そして、NYという土地柄、アメリカ人だけでなく、ヨーロッパや南米、その他の地域の人たちを見ていて思うのは、自尊心が著しく低いのは日本や韓国、中国といったアジア諸国で、それ以外の国の人たちは皆高い自尊心を持っています。

さすがに至近距離では撮れないので、見にくい写真ですが、週末夜にドレスアップしたゲイの方々。ゲイの人が生きやすい社会であるというのも、ゲイの人たち自身が、たとえ社会の中で少数派だとしてもゲイというプライド(自尊心)を高く保って生きているのと同時に、自尊心の高い周囲の人たちもそうした彼らのプライドを受け入れているからだと思います。

ニューヨーク生活が長い日本人は、アメリカ人ほどと言わなくても、通常の日本人よりは自尊心が高めかもしれません。実力が伴っていないのに自信を持つことは禁物ですが、ある程度やってきたという自負があるのであれば、それなりに高い自尊心を持たないと、アメリカ社会では生き残れないのではないかと思います。
変に謙遜してしまう人と話をしていると、結局その人の本心がどこにあるのか分からなくて、ついこちらも構えてしまいますが、自尊心が高い人は、思ったことをストレートに表現してくれるので、知り合ってすぐにでも距離を縮めることができ、私の身近で、私が素敵だと思う日本女性たちは、実力と自尊心のバランスが良い方々です。

さきほどのお土産の例に戻ると、ニューヨークであれば、日本流の枕詞は省いて、「これ、日本で見つけて、xxちゃんにぴったりだと思って買ってきたの」とか、「日本で人気のようで、とても良い物なので、xxさんにもぜひ」なんて言って渡すことでしょう。

self esteemは一朝一夕で変わるものではないので、この違いは学校教育やその社会で大切にされている価値観の違いによるのではないかと思います。