先日9月11日、世界中の人々が忘れもしないあの悲劇の日から9年目を迎えました。
マンハッタン島の先端で、空へ向かってまっすぐそびえたち、世界の中心都市としてのNYを象徴する建物であったワールドトレードセンターが静かに崩れ落ちていく姿は、9年前とは思えないぐらいに鮮やかに記憶に残っている人も多いと思います。
特に、その震源地となったここNYでは、あの忌まわしき日を忘れようとして年々追悼式への参加者が減少しているという話も耳にしたことがありますが、やはりその日はテレビや新聞でも追悼式の模様を大々的に報道していました。
建設は遅れに遅れていて、4棟のビルが完成するのは、2014年になる見通しです。
ワールドトレードセンターの跡地は、複合商業施設として生まれ変わろうとして工事が進められていますが、この工事の中断を余儀なくさせるような一大事件が起こり、ここ数ヶ月、新聞やテレビをにぎわせています。
その出来事とは、
ワールドトレードセンターの跡地からたった2ブロックしか離れていない場所へのイスラム教センターの建設
その富と権力を国外にまで向けて誇示するアメリカと、そうした資本主義に対抗するイスラム世界との対立から起こった9.11。
昨今の世界情勢を見ても、この対立の構図は9年経った今でも変わることはなく、特に様々な宗教の人々が入り混じるNYにおいて、この建設計画は長らく物議を醸していて、一向に解決の兆しは見えてきません。
建設計画を推進するイスラム教徒とあえてワールドトレードセンター跡地の目と鼻の先にこうした施設を建設して遺族の気持ちを逆なでするのはおかしいと大反対する人々。それに他の宗教の人々が独自の意見を披露して議論は堂々巡り。
こうした状況を見て、オバマ大統領は先月、こんな意見を述べています。
「イスラム教徒には、他の人種と同様に信仰の自由がある。それには、地方の法律に基づいて、礼拝の場所を建設する権利、ロウアーマンハッタン(ワールドトレードセンター跡地があるエリアのこと)の私有地にコミュニティーセンターをつくる権利も含まれる」
ブルームバーグニューヨーク市長も、同様イスラムセンター建設に賛成の意思を表明しています。
あえてこの場所につくらなくても良いのでは、と個人的には思いますが、こんなに大論争になるとは思わなかったイスラム教徒の人々は、いまとなっては意地もあり、建設計画を白紙に戻すことは考えていないようです。
もしこうした事態が日本で起こったら、真っ先に建設計画は中止になっているのではないかと思うと、あくまでも「人種の平等」と「信仰の自由」を拠り所としてこの計画案を支持するオバマ大統領やブルームバーグ市長の姿勢からは、アメリカという国がいかに「人種の平等」と「信仰の自由」を重視しているのかを知ることができ、個人的には大きな驚きを持って受け止めています。
イスラム過激派によるテロと戦い続けたこの9年間のアメリカ。
しかし、そうした重み以上に、人種差別の禁止と信仰の自由が保障されているのは、驚くべき事実ではないでしょうか。
それほどまでに、この2つの信念はアメリカ社会に深く根付いているのです。