(このブログ記事は、偶然ですが、バイデン大統領が大統領選挙戦から撤退を表明した20分前に投稿しましたので、記事は民主党候補者はバイデンという前提で書かれています)
全米に衝撃が走ったトランプ前大統領の暗殺未遂事件から1週間強。アメリカ大統領選挙はさらに混迷を極めてきました。
投票権がない私(アメリカでは、アメリカ市民にのみ投票権があり、グリーンカード保持者には投票権がありません)にとって、アメリカ大統領選挙の動向はニュース等で状況を注視することしかできません。日本では友人たちと政治について会話することはほとんどないと思いますが、政治談議も日常の会話で行われるのがアメリカ。政治ネタに熱心な私のテニス仲間たちのグループチャットでは、最近では、テニスの話題よりも大統領選挙のことで盛り上がっています。
日本在住の方々に今年のアメリカ大統領選挙のことについて聞かれることが多いので、今日はNY在住者の視点(投票権はないのであくまで傍観者としての立場)から見たアメリカの大統領選挙について書いてみたいと思います。
「本当にトランプは優勢なのか?」
日本在住の方々に一番よく聞かれるのが、この質問。クレイジーな言動が目立つトランプ、そして、前回の選挙ではバイデンに敗れたトランプが、なぜ今回の大統領選挙で優勢なのか疑問に思われる方が多いと思います。
実際のところ、どのような状況なのでしょうか。
数か月前からトランプが僅差でバイデンをリードしているという報道がアメリカでもなされていましたが、この1か月の間によりトランプ優位な状況になっていると感じます。
その理由は2つ。
1つ目の理由は、6月末に行われた今回の大統領選挙の初の直接討論会でのバイデンの失態。風邪の病み上がりだったのか、声もかすれ、現職大統領としての覇気がないばかりでなく、しどろもどろな質疑応答に民主党幹部はかなり焦ったと言われています。そして、バイデンのままでは民主党は今回の大統領選挙に勝てないので、民主党として別の候補を擁立するべき、という意見が強まりました。
2つ目の理由は、トランプの暗殺未遂事件。多くのSPも警備にあたっていた中で、銃弾がトランプの右耳を貫通するという前代未聞の事件。あの状況の中で拳を突き上げながらステージを去ったトランプの姿は、(トランプの人柄や政策とは無関係に)強い大統領のイメージを印象づけました。
では、そもそもどういった人たちがトランプを支持しているのでしょうか。
私はトランプ支持派は次の2つのグループに大別できるのではないかと思っています。
1)保守的思考で昔から共和党支持の人々:トランプがスローガンとしている"Make America Great Again"に賛同し、トランプを積極的に支持
2)無党派層で現在の生活に不満を持っている人々:改善の兆しが見えない物価高で生活に困窮する労働者階級。特にトランプを積極的に支持するわけではないけれど、バイデン政権になって生活が苦しくなっているので、バイデン続投には賛成できず、消去法でトランプを支持
前者はもともと熱心な共和党支持者でありトランプサポーターなので、過去の選挙でもトランプに投票し、今回の選挙でもトランプに投票予定の層です。この数は、過去から大きくは増減していないと思います。
一方で後者の数が増えていることが、トランプ優勢と言われている理由ではないかと思います。つまり、積極的にトランプを支持しているわけではないけれど、バイデン政権に不満があり、バイデン続投は阻止したいという層です。
2億4千万人もの人が投票権があるアメリカを1つにすることは容易ではありません。生き方、価値観、思想、宗教、家庭環境などなど、多様な人たちなので、大統領に求めることも一人一人で異なります。
アメリカという国を俯瞰的に見て、国にとって最も良いかじ取りをできる人、という視点で大統領を選ぶような志が高い人もいると思いますが、多くの国民は、まずは、自分の生活が安定すること、豊かになることを望んでいるのが実情です。そのため、パンデミックが終わった後も続く物価高で日々の生活に苦しむ人たちは、バイデン政権にこれ以上政権を任せられないと思ってしまっているのが現状だと思います。
そのため、トランプを支持しているわけではないけれど、バイデンには投票したくない、となっているのです。
もし、バイデンがこの選挙戦から撤退し、民主党から新たな候補が出てきたら、アメリカ大統領選挙の行方は分からなくなるのではないかと思いました。
前述したテニス仲間の友人たちは、バイデンに代わる候補として、Pete Buttigiegを推しています。
11月の投票までもうあまり時間がありませんが、民主党にとって今こそが正念場ではないかと思います。