過去何回かにわたってアメリカの労働市場について書いてきました
その中で、アメリカでは誰でもできる仕事ではなく、その人独自のスキルや経験を生かせる仕事が高く評価されること、女性の社会進出も日本と比べて進んでいることなどを紹介しました。
・アメリカの会社が求めている人材
・アメリカ流・転職の考え方
・アメリカにお茶出しOLはいるでしょうか?
・アメリカのキャリアウーマンたち
では、日米において、どうしてそのような違いが生じているのでしょうか。
渡米して日米の労働事情の違いを知るにつれ、そうしたことを自分なりに考えてきたのですが、それは、社会的要因によるところが大きいのではないかと思っています。
まず、大きな違いは、アメリカの大学の学費は驚くほど高いということです!
アメリカの教育機関が出している統計によると、アメリカの4年制大学の学費(寮代を含む)は、全米平均で、州立大学が年間17000ドル(約170万円)、私立の大学は年間34000ドル(約340万円)にものぼっています。
アメリカは大学4年間の成績によって良い会社に就職できるかが決まるので、みんな必死に勉強します。
それでも、専門的なことを学ぶには大学では足りず、大学院に進むことは日本よりはるかに一般的です。
すると、大学4年間の莫大な学費に加えて、さらに追加で学費がかかることになります。
アメリカでは、裕福な家庭であれば、親が学費を全額払うこともありますが、普通の家庭では、一部(大部分の場合も普通です。)は自分で払います。
大学時代は勉強で忙しくて学費を稼ぐ余裕はないので、学生ローンを借りて、卒業後就職してから何年にもわたってローンの返済を行っていくのです。ローンなのでもちろん利息も発生します。
日々の生活での支出に加えてローンの返済もあるので、大学で教育を受けるレベルの人は、それなりの仕事、大学で学んだことが生かせる仕事へと就いていくのです。
大学の学費に関連していますが、借金を背負ってまで勉強に精を出しているアメリカの学生たちは、大学で学んだことを実際の社会生活で生かす場所が会社であると考えています。
大学での専門的な勉強がその後の仕事につながっていくというのはとても自然な考え方だと思いますが、終身雇用制度のもとで会社のことをよく知っているジェネラリストを育てていくスタイルの日本では、個人の専攻と配属先が関連性があるとは限りません。
それに対して、一つの会社に骨を埋めるという考え方がないアメリカでは、大学での専攻から社会人になってからの仕事は一貫性が求められます。そうでないと、自分の能力を社会で生かすことができず、生き残っていくことができません。
こうしたアメリカの大学制度が、その後のキャリア選択や形成、仕事に関する社会的概念に大きな影響を与えているのではないかと思います。