NYに住む

シナリオのある人生

国籍を問わず、日本で普通に暮らしていたら知り合うことのできなかった人たちと知り合うことができるのが、NY生活の醍醐味の一つです。

日本では、大学を出て会社に就職してサラリーマンやOLをする、という人生を送る人が大多数だし、そうすることがある意味「そうすべきであると考えられている道」だと思いますが、NYには色々な人生を送っている人たちがいます。

それは、世界中の人たちが暮らし、様々な文化や価値観が混ざり合う土地柄、こうあるべき、という価値観のようなものが存在せず、個人が選択した生き方に対して、社会も周囲の人たちも好意的だからだと思います。

最近、そんなことを再認識した出来事がありました。

行きつけの日系美容院Hair Matesの経営者Toshiさんとの出会いです。

手頃な料金設定で、日本人美容師さんを多く抱えるHair Matesは、NYの日系美容院の老舗中の老舗です。
今までずっとカットをお願いしていた美容師さんが日本へ永久帰国してしまったため、今回、Toshiさんにカットをお願いしました。ジーンズが良く似合うおしゃれな60代のおじさんToshiさん。

話が弾み、1時間ずっと話していたのですが、Toshiさんが強調していて、私も共感したのが、「シナリオのある人生」を送るということ。

40年ほど前、海外で修行したいと一人日本からNYにやってきた美容師Toshiさん。
今でも治安が悪いブルックリンの奥地の米系美容室でキャリアをスタートし(当時はとても危ない地域で、出社数日で自分が持っていた腕時計等、金目のものは全部なくなってしまったそうです。。。)、数年後にはミッドタウンの一等地に念願の自分のお店をオープン。現在では、東京に4店舗、NYに3店舗を持つ一大美容室へと発展させました。

それでも、経営者として毎日危機感を抱え、自分自身切磋琢磨しながら、従業員を鼓舞して暮らしているそうです。
Toshiさんは、NYに来る前、こんな生き方をしたいという「シナリオ」を作り、状況に応じてそのシナリオを修正しながら、40年間やってきたそうで、「シナリオ」通りの人生が送れているからか、話し方や表情、醸しだすオーラにすてきな余裕が満ち溢れていました。

40年間、NYで色々な人たちの生き様を見てきたToshiさんは、「シナリオ」があれば、どこへ行っても、たとえ不可避な事情により日本へ帰ることになっても、充実した人生を送れていると言います。

Toshiさんから見て、昔のNYと今のNYの一番の違いは、シナリオを描いてNYにやってくる日本人が減っていることだそうです。
確かに、私も渡米後驚いたのは、目的なく何となくNYへやって来ている日本人がとても多いことでした。留学、仕事、どんな形であれ、海外へやって来る、というのは大きな出来事だし、それなりに自覚や覚悟がいるものだと思っていましたが、何となく日本にいてもつまらないから、とかただ来てみたいから、という理由でNYへやって来ている日本人はとても多いです。でも、海外での暮らしは日本のように守られた環境ではないので、安易な気持ちで渡米してしまうと、ビザの問題に直面して思いがけないタイミングで日本へ帰らなければいけなくなってしまったり、学生なのにバイトに手を出して本業が疎かになってしまったり(これは違法で見つかると強制送還です)、気づいたら年をとって日本へ完全帰国することもできなくなってしまったり(日本社会での年齢制限により就職できなくなってしまう)、といったことから、思ったような生き方ができなくなってしまい、身動きがとれなくなってしまう、といったことにもつながってしまいます。日本にいたら、日本の社会や周りがなんとか助けてくれるので、NYは厳しいところだなぁと思いますが、その反面、シナリオがきちんとあれば、日本にいる以上に大きな可能性や広がりを得ることができるので、面白い場所でもあると思います。
新年を迎えるにあたって、私も自分のシナリオに加筆修正をしてみたいと思います。

そして、Toshiさん、カットの手さばきが見たことがないぐらいしなやかで、自分の髪とは思えないぐらいまとまりある髪型になりました。
また面白いお話を聞きに、次回もToshiさんを訪ねたいと思います。

Hair Mates
HPはこちらからどうぞ。

Toshiさんはミッドタウン店がメインですが、イーストビレッジ店にいらっしゃることもあるようです。電話は日本人スタッフが対応してくれます。


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