最近一緒に仕事をしているV君は、ニューヨーク出身の生粋のニューヨーカー。丁寧で細やかな日本の技術が好きなようで、面白いことに、日本に行ったことはないものの、行きつけのヘアサロンは隠れ屋風の日系のサロンで、たまに隣りの州の大型日系スーパーで日本のお菓子を調達し、性能が良いからとセイコーの腕時計とMade in Japanにこだわって大阪で作られているリュックサックを愛用しています。
去年の夏に初めて会った時には、全然そんな素振りは見せていなかったのですが、V君は日本のことを驚くほどに知っています。元々のルーツは東欧を思わせる苗字で、肌は真っ白、そしてヒゲは赤(染めているわけではなく、赤毛のアンのような自然な赤い色です)。V君と話すにつれ、外見からは全く伺い知れない日本に関する知識の多さに驚かされています。
この間、残業していて、いつものごとく夕飯のデリバリーを頼むことになったのですが、その日はたまたまV君と二人だったので、私が気に入っている日系のカフェのごはんにしたいと伝えたところ、二つ返事をもらいました。(舌が肥えていて、日本人が経営する高級和食店に行くニューヨーカーもいる一方で、大多数のアメリカ人は、正統派和食よりもアメリカ風にアレンジされた日本人以外が作る和食の方が好きなため、和食が好きと言うアメリカ人以外のアメリカ人が一人でもいる時には、私が好きな和食を夕飯に提案することは遠慮しています。)
私が前菜に頼んだのは、納豆豆腐。醤油が別についてきたのですが、その小さな醤油入れを見て感動しているV君。しまいには、写真まで撮り始めました。
どんなに素晴らしい醤油入れなのかと思って見てみたところ、日本ではお弁当によく使われているビニール性で小さな赤いふたがついたものでしたが、魚をイメージした形で、V君はこんなに手の込んだ醤油入れは見たことがないと興奮していました。
初登場、私の同僚。あまりに面白い光景だったので、写真に撮らせてもらいました。(V君の許可のもとに掲載しています。)
確かに、ニューヨークでお醤油といえば、お洒落っ気のかけらもないパッケージに入ったものしか見たことがありません。
お醤油は究極的にはきちんと品質さえ保たれていればどんな包装でも良いのですが、こうした細かいところにもこだわり、魚をイメージした小さな容器に入れるのが日本社会の暗黙のルールかもしれません。
効率性重視のアメリカ人の中には、日本のような醤油入れを作ろうとする人はいません。どのみち夕飯が終わったとたんに捨てられるものと分かっているからです。
こうした細やかなことへの気配りは、性能の良いことで知られる日系の自動車、日本のおしゃれな文房具といった物的なものだけでなく、おもてなしの精神を大切にする日本人の心にも脈々と流れていて、それこそが日本人とアメリカ人の大きな違いの一つのような気がしています。