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世界中の人を惹きつけてきたミシュラン三つ星シェフの思い切った決断

一足早く春が訪れたNYは、新緑が美しい季節になりました。感染者数は激減しているものの、ニューヨーク市に対しての州知事による自宅待機命令は引き続き行われていて、皆その解除を待ちわびています(一定の条件を満たした地域から経済の再開が許されることになり、NY州の北部地域から少しずつ開放が始まっています)。

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天気が良い日は公園は、お散歩や自転車、ライニングをする人たちで賑わっています。

 

essential事業として、レストランはテイクアウトとデリバリーのみでの営業が認められていますが、もともとこうした事業を行っていない超がつくほどの高級レストランは、苦境に立たされています。世界中からの食通たちを惹きつけ、2017年には、世界最高のレストランの勲章をもらい、ミシュラン3つ星の常連、Eleven Madison Parkも例外ではありません。料理の質はもちろん、盛り付けから店内のインテリア、遊び心満点の仕掛けなど、このお店を最高級のレベルに保つために雇われていたスタッフの数はなんと175人。そのトップに立っていた経営者でありヘッドシェフのダニエル・ハムさんは、窮地に立たされてしまったのです。

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マディソンスクエアパークを見渡す場所にひっそりと構えるEleven Madison Park。あまりに控えめな店構えに、よくこの前を通っていましたが、実際にお店に行くまで気がつきませんでした。2015年、突然キャンセルが出て、ディナーに行けることになりました。ブログ内の写真は当時撮影したものです。当時の体験談は、こちらからどうぞ。

 

ビザで雇われていた移民シェフも多かったというこのレストラン。なんとか従業員たちを雇い続けて守ろうとしたそうですが、今後の予約が全部キャンセルとなりお金が入ってこない状態でそれができないことはすぐに明らかとなり、考えに考え抜いたハムさんは、なんと、驚くべき事業モデルの転換を図り、注目を浴びています。

そのスピードや柔軟な発想に驚いていますが、コロナの後、レストラン業界は元どおりに戻らないと言われている(*)この状況で、ハムさんの生き方はレストラン事業以外に従事している私たちも見習うべき点があると思います。

(*) social distancingで他人と一定の距離を取ることが義務付けられているニューヨーク。今後、レストランのテーブル席は今までよりも間隔を空けることになるのではないか、と言われています。また、しばらくは、観光客が今までのようにはNYを訪れないと思いますので、観光客からの収入も多かったレストランのビジネスは、以前と同じ形態では採算が取れないと思います。

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おしゃれな店内。スタッフのサービスも素晴らしかったです。

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ディナーはコース料理のみ。一品一品の繊細さは目を見張るものがありました。

 

ハムさんの決断とは、レストランのキッチンをコミュニティーキッチンへ変えるということでした。かつての同僚が始めた非営利団体と組み、アメリカンエキスプレスのサポートの元で、毎日3000食もの食事を病院や警察のスタッフへ届けることにしました。ボランティアと最低時給で雇ったわずかな数のスタッフをまとめ、衛生環境抜群の自身のレストランのキッチンを利用して料理は作られています。レストランが閉じているため、レストランへ食材を供給していた農家なども経営が厳しいようで、ハムさんのこの取り組みは、そうした人たちを助けることにも繋がっています。

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ディナーの合間にはこんな面白い演出も。ここでピュレされた人参は、化学の実験教室のような形で登場しました。

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この状況の中で、どんな決断が正しいかは誰も分からないので、「自分が」正しいと思ったことを行うことにした、と語るハムさん。従業員たちの反応も様々で、この状況の中で解雇は止むを得ないと理解を示す人がいる一方で、今までやったことがなかったデリバリーに挑戦して今まで通りお店を続けて雇用を守ってほしい、という人もいたそうです。しかし、スタッフの健康を危険に晒すことになる上に、万が一スタッフに感染者が出てしまった場合は、一定期間お店を閉じなければいけません。実力派社員の一部が、こうした理由で懸念を示したこともあり、ハムさんはコミュニティーキッチンというアイディアを進めることにしたそうです。レストランビジネスはホスピタリティー事業で素晴らしい産業、と語るハムさん。そのホスピタリティー精神を全く違う形で実現しているハムさんの生き方は、レストラン関係者だけでなく、多くの人に感銘を与えています。

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1品1品が芸術作品のよう。

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ディナーの最後にはお土産まで。ニューヨーカーが大好きなグラノラとニューヨークを代表するblack & white cookie!black and white coockieって何?という方は、をぜひご覧ください。こちらの過去記事をどうぞ。


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