NYで学ぶ NYに住む

大江千里さんと私

数ヶ月前のことですが、NYにジャズ留学をし、そして今ではジャズアーティストとしてアメリカでご活躍されている大江千里さんの新著「9番目の音を探して」が発売されました。

日本であれだけ有名だった方とは思えないほどのハングリー精神でニューヨークでの学生生活を乗り超えた大江さん。留学を目指す人のバイブルとも言える本です

大江千里さんといえば、30代以上の世代にとっては、日本での歌手やシンガーソングライターとしての輝かしい業績が真っ先に思い浮かぶと思いますが、NYのジャズの名門ニュースクールという大学で学ぶために、2008年に愛犬とスーツケース1つで、片道切符で日本を離れました。

数年前から、日本人に人気のバー、富ジャズで定期的にジャズの演奏をしたり、また、震災の時には真っ先に親友の渡辺美里さんとチャリティーライブを開催したりと、精力的に活動されています。そして、何よりも、とても謙虚で、誰に対しても対等に、そして丁寧に接してくださるその人柄から、NYの日本人の間でも彼のことを慕っている人は多いです。

最近のニューヨークの街角。ハロウィンの装飾が目立つようになりました。このかぼちゃ、一人で抱えこんでやっと持ち上がるような特大サイズです

超有名人の大江千里さんと、一般人で普通に暮らしている私は、住んでいる世界は全然違いますが、ちょっとした共通点から、私は昔から彼に特別の親近感を抱いています。
その共通点は、昔からNYでやりたいことがあったこと、その夢実現のために日本での仕事を辞めて渡米したこと、NYでは学生に戻り無収入の危機感の中しばらく暮らしていたこと、NYが好きでこれからもNYで暮らしていきたいと思っていること、です。

そんな共通点から、大江千里さんの渡米から今に至るまでの話が書かれた、今回の新著の発売をとても楽しみにしていました。
英語に不自由し、授業についていくのが精一杯だった頃、高校卒業したての若者とのルームシェア、ジャズの基礎が分かっていないとクラスメートに馬鹿にされ必死に夜中まで練習した日々、練習のしすぎで手を壊してしまった事件、大変なことが多くてもNYでの刺激ある生活がいつも後押ししてくれたこと、LAの大御所の先生に習いに行くために旅費を節約し、往復自分で運転して愛犬と一緒にLAへ行った思い出、最初は落ちこぼれだったのに卒業する頃にはお世話になった先生にも褒められたこと、そして卒業後もアメリカに残れた数少ない生徒となったこと(ビザ等の難題から、アメリカでの就職の壁は高く、卒業後母国へ帰国せざるをえない人が多いです)などなど、どれも手にとるように詳細な情景描写とともに書かれたこの本は、その時々で大江さんが考えたり感じたりしていたことが、自分と重なることも多く、私のこれまでの6年間のNY生活を振り返る良いきっかけともなりました。

ユダヤ人経営の有名デリ、Eli Zaberの色とりどりのクッキー。デザインもニューヨークらしいです

本の出版直後に行われた大江千里さんのライブで、本の感想を伝えてサインを頼んだら、「いつもありがとう。フェイスブックではつながっていたっけ?これからもよろしく。」と言って、名前入りで丁寧にサインをしてくださいました。(大江さんは、フェイスブックのコメントにもいつも律儀に返事を下さいます。)

こちらの大学を卒業する頃には、自身のレーベルも出し、ポップスの世界を離れてジャズの世界で歩み始めた大江千里さん。他人の意見に惑わされず、NYの地で自分がやるべき方向を見定めて、一歩一歩確実に土台を築き上げていっている姿に、いつも共感しています。
大江さんが作り上げていくジャズの世界を、これからも追いかけていきたいと思います。


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