米田選手には、選手時代からお世話になっているメンターの方がいます。
その方は、プロを目指す若い子たちからオリンピック選手まで多くのスポーツ選手のメンタルトレーニングを行っていて、現役引退した米田選手は、いまその方のもとでコーチング技術を学んでいます。
今回のNYツアーも、もちろんその方も同行していて、私たちの交流会にも参加されていました。
その方が、「いままでにたくさんの選手の指導をしてきたけれど、現役時代からこんなに物事を深く考えている選手に出会ったことはない」としきりに話していました。
その言葉のとおり、世界を舞台に戦った選手の深く重みある言葉に、参加者はどんどん吸い込まれていきました。
当日の1問1答を、アテネオリンピックにいたるまでの道のり、アテネ本番、引退そして指導者への道を目指すいま、の3段階に分けて再現したいと思います。
アテネオリンピックにいたるまでの道のり
Q1 スポーツ選手は、本番のほんの数十分の演技に向けて何年間も厳しいトレーニングを積んでいますが、その間どのようにしてモチベーションを高く保っているのでしょうか?
いつかスポーツ選手に会うことができたら(まさかこんなに早くその機会が訪れるとは思っていなかったのでビックリです!)絶対にしてみたいと長年思っていた質問をしてみました。
A1 モチベーション維持の方法は、選手時代常に考えていたことでした。その日の練習で撮影したビデオを寝る前に見て修正点をチェックし、次の日の課題を見つけることでモチベーションを維持できました。
また、毎日体育館にこもっているので、できる限り色々な人(特に違う分野の人)に会って話しをし、感銘を受けることも良い刺激となりました。テレビでスポーツ選手のドキュメンタリーも見ていました。
Q2 米田選手の選手人生を変えるきっかけとなった印象的な言葉はありますか?
A2 特に具体的な言葉はありません。しかし、常に相手がどうしてそう考えるのか、どうしてそう行動するのか、なぜそれは起こったのかといったことはよく考えていました。たとえば、「なぜ人はミスをするのだろうか?」、「なぜ練習に遅刻してくる選手がいるのか?」といったことです。
こうした深い質問は、日ごろからメンタルトレーナーの方にも投げかけていたようで、その方もよく驚いていたそうです。
アテネ本番
Q3 本番の演技で一番緊張した瞬間は?
A3 オリンピックの会場、特に決勝の会場は、選手だけでなく観客も緊張していて、その緊張感が会場中を支配していました。そのため、決勝の最初の床の演技のときが一番緊張しました。
団体競技では、競技を終えたメンバーの精神状態が次に演技するメンバーに影響を与えてしまうので、たとえ小さなミスがあったときでも、キャプテンとして、常にみんなを鼓舞することを心がけていました。そうすることで、緊張を克服できたと思います。
Q4 団体競技では、キャプテンとしてどのようにしてチームをまとめていったのでしょうか?
A4 絶対に金メダルをとりたいと思っていましたが、その言葉を直接チームメンバーへ投げかけることはしませんでした。かえってプレッシャーを与えて逆効果だと思ったからです。そこで、先にマスコミに金メダルをとる!と公言して記事にしてもらい、外からプレッシャーをかけることでチームメンバーに刺激を与えました。(団体は28年間金メダルを逃していたので、この言葉は意外性も手伝って有効に機能したようです。)
その後、メンバーがリラックスしている時、食事のときやお風呂に入っているときに、一人ひとりに「僕たち金メダルとれるかな?どう思う?どうしたらいい演技ができるかな?」と問いかけて、チームとしての最終目標を明確にしていきました。
オリンピックの演技を見ているだけでは分からない裏話に、私はどんどんひきこまれていきました。
スポーツは、その裏にいつもいろいろなドラマ、秘話があり、そうしたことを知ると、結果だけにとらわれることはなくなくなり、選手の魅力も再認識することができるようになると思います。
次回は、現役引退した米田選手のいまをつづりたいと思います。