NYから日本を考える NYで異文化体験

海外に住むということ

インターネットが発達し、世界中の情報が瞬時に手に入れられるようになった現代社会においても、日本に住んでいた頃、私にとって、海外というと「特別なところ」というイメージが抜けきれず、自分にとって遠い世界でした。

また、NY生活を夢見ていた頃の私にとって、海外というと、英語の環境に身をおける、ということ以外にこれといったイメージはありませんでした。

しかし、NYで暮らし始め、日本では想像もしなかった壁にぶちあたったり、その壁を壊したりよじ登りながらなんとか暮らしていく中で、「海外で暮らすということ」は、私にとって、大きな意味を持つようになっていきました。

それは、ただ生の英語を学べるということ以上の重み。

海外での暮らしとは、

日本以外の国の人たちの暮らしぶりを目の当たりにし、彼らの生活様式や宗教観を学び、自分と全く異なる世界で生まれ育った人たちと仕事をし、彼らの仕事の仕方を体験するということ。

それはつまり、日本で「正しい」「当たり前」であると考えられていた価値観の大きな修正を強いられることでもあり、世の中には多様な生き方があるということを知り、自分にとって、どんな生き方が合っているのかを考えることでもあります。

日本にいると、日本でみんながやっていることが「常識」であるという概念が自然と出来上がり、そこから少しでも外れたことは非常識であると捉えられてしまうことが多々ありますが、人種のるつぼと呼ばれるNYで暮らしていると、同じ日でも街行く人の服装はまちまち(半そでの人もいればショートブーツの人もいたり)、自分の国で慣れ親しんだファッションやメイク、髪型をし、英語が公用語とはいっても母国の言語を話し、幼い頃から信仰している宗教にならって生活をし、と一人ひとりが個性的。いったい何が普通で何が普通でないのかは誰も分からないぐらいに、「同じ」ということがありません。

それは、生き方についても同じで、日本では、高校や大学を卒業したら会社勤めをし、就職したら一つの会社に献身的に勤めていき、その過程で家族を持ち、家庭を築いていくということが、誰しもが思い描いている人生なのではないかと思います。

NYの名物といえば、道端で食べ物を売っているフードトラック。これは、毎日、マンハッタン外から車で運び込まれてきています。写真は、夕方、フードトラックを車につないで持ち帰ろうとしている光景。NY生活5年目にして初めて目撃したシーンです。

しかし、アメリカでは、一つの会社に長くいることは美徳とはされず(着実にステップアップしていくためには、転職をすることが必要であると社会的に考えられています。)、一度始めたキャリアでも、途中で大胆な進路変更をしたいと思えば大学院に行き直すことも可能、リベラルな州では同性結婚も認められているし、シングルマザーであっても社会から白い目で見られることはなく、女性の社会進出もはるかに進んでいて、結婚したから家庭に入るという価値観はそもそも存在していない、等々、日本でタブーと自然に考えられていたことが、周りの目を気にすることなく、すべて個人の意思と選択で実現できる社会になっています。

それは、日本でいわゆる「日本的生き方」しか知らなかった私にとって、大きな衝撃でしたし、英語を学ぶということ以上に、そうした多様な生き方があるということを知る機会を持てたのは、海外生活がもたらしてくれた大きな財産だと思います。

今日は、日本での社会人時代にお世話になった先輩と、久しぶりに再会し、ずっとそんな話をしていて、昔からの友人で、私が日々思っていることと同じことを考え、そして共感してくれる人がいるのは、ありがたいことだなぁと思いました。

結局どんな生き方を選ぶのかは個人次第。そのときに、日本から一歩外へ出ると、日本と全く違う世界が広がっていて、日本での常識が常識ではないんだ、ということを知ることはとても重要なことだと思います。

私は海外生活推進派というわけではありません。また、もともとは自分の意思でアメリカへ来たけれど、やはり日本のほうがいいと言って、日本へ帰って行った人たちを、NYでの生活の中でたくさん見てきました。どこに住むかということを考えたときに、いったん日本の外に出てみて外の世界を知り、そして最終的に日本を選ぶのと、もとから日本以外のことを知らなくて日本を選ぶのとでは大きな違いがあると思います。また、人生のステージによって住みたい場所も変わってくることでしょう。若いうちは海外でも、退職したら日本を選ぶ人も多いと思います。ただ、どんな時にも、自分が選べる選択肢の幅はたくさん持ち、その中からベストな選択をできるように、感覚を研ぎ澄ましていきたいと思います。

日本の歴史を紐解いても、日本が国として発展していったのは、遣隋使の時代から始まり、海外の情報を持ち帰ったことによるものでした。海外志向の日本人が減っている中で、1年でも海外生活を体験し、外の世界で見聞きしたことを日本に持ち込み、日本が本当の意味で「国際化」していけたらいいなと思います。


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