NYに住む

ある夏の思い出

その恋は、何の前触れもなく、ある日突然始まった。

遠く離れていたので、たまにしか会えなかったけれど、会うたびに見せられる毎回違う表情に、私はのめり込んでいった。楽しいところ、魅力的なところもたくさんある一方で、冷たいところ、意地悪なところもあったけれど、当時の私の中では、良いところばかりが大きく膨らんでいって、少しでも近づきたい、そんなことを毎日考えては、その表情を思い浮かべていた。

やっとその距離が縮まった時、もうずいぶん分かってきたつもりだったのに、また別の表情があることに気づき、驚いたこともあった。ずっと近くにいれるようになって最初の頃は、私が本当に好きなのか試すかのようなことをされたことも数知れない。

でも、時間が経つと、私の想いにようやく気づいてくれたのか、だんだん優しくしてくれるようになり、今まで見せてくれなかった素顔も少しずつ見せてくれるようになった。
今ではすっかりその距離も縮まり、もはや私にとって居なくてはならない存在。
もう当たり前の存在になってしまったので、ときめくこともないけれど、離れているとやっぱり気になってしまう。

そんな深い関係は、今日でちょうど5周年。
そう、その相手は、私が住む街ニューヨーク。

1999年、たまたま旅行先に選んだニューヨークに魅せられ、10年越しの夢を叶えて渡米、そして今日はその5年目の記念日でした。
その刺激に圧倒され、良いところばかりが見えていた3度の旅行時代と違い、住んでからは、このブログの記事の軌跡に凝縮されているように、山あり谷あり。

しかし、もはや5年も経つと、ヒールがはまって動かなくなるような汚い道も、地下鉄内で歌や演説を披露して物乞いする積極的なホームレスも、無愛想な店員も、スーパーで売られている賞味期限がはるか昔の食材も、突然各駅から急行に変わる電車も、街中で日本語が使えない暮らしも、何もかもが当たり前になってしまい、短期間でもニューヨークを離れると、ニューヨークが恋しくなる、そんな心と身体が自然と出来上がりました。

「ニューヨークはアメリカではない、ニューヨークなんだ」と話す人はよくいますが、世界中の人を惹きつけてやまないこの都市の魅力は、その一言に凝縮されていると思います。
ニューヨークという国がある、と考えたほうがしっくりくるでしょう。

5年前、日本を旅立った時の私は、2,3年後自分がどこでどうしているのかすら想像できませんでした。世界一暮らすのが大変と言われている(渡米してから、そんな表現があることを知りました。)らしいニューヨークで、この5年目の記念日を迎えることができたことは、とても感慨深いです。

今まで応援してくださった皆様、どうもありがとうございます。

大好きなフィナンシェのケーキ

次の5年は少し遠すぎるので、この節目に、2,3年後の目標を立てることにしました。
私がニューヨークで学んだこと、気づいたことを、何らかの形にできたらと思っています。

今後も、どうぞよろしくお願いします。

2014年8月11日 初夏のNYより
white cat


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