NYから日本を考える NYで働く

アメリカにお茶出しOLはいるでしょうか?

こちらへ来て間もない頃に親しくなったルーマニア人の男性は、日本語が堪能、そして日本の文化や習慣にも興味があり、大学時代の夏休みに3ヶ月間、東京に本社を構える老舗大手製造業の会社でインターンシップを行いました。

日本のことをよく知って来日したものの、古い体質の会社でいろいろ驚いたことがあるそうですが、その一つが、会社に長く在籍していて経験豊富な女性がお茶出し係だったことだそうです。忙しい仕事の合間にお茶を出す彼女を見て、ある日、男性上司が彼女にお茶出しをお願いしている場面に遭遇した私の友人は、「手が空いている僕がやりましょうか。」と申し出たそうです。でも、彼はその上司に、「xxくん、男性にお茶を出してもらいたいですか?」と言われて、あっさり断られてしまったそうです。

その言葉にとても驚いたという私の友人。それには、こんな背景があります。

1. アメリカ社会では、もちろん完全ではないにしても、表向きは「男女平等」が貫かれているため、「男性だから」とか「女性だから」という理由で、物事を判断すると、それは差別として厳しい制裁の対象となります。

2. アメリカ社会は、Lady firstの文化が徹底していて、男性は日本では考えられないぐらいいろいろなことをしてくれます。レストランで空いたコップに水やお茶をつぐのは女性の役割、といった概念はありません。(レディーファーストについての過去記事は、女性にやさしい街・NYCサバンナの愉快な仲間たちからどうぞ。)

3. アメリカでは、職務の専門性が重視され、本業以外の枝葉末節な仕事をすることは求められていません。

4. アメリカでは、他人との関係が日本のように堅苦しくなく、皆はるかに気さくです。お客さんが来たらもちろん丁寧に対応しますが、その一貫で、一人一人にお茶を出すということは誰も期待していないです。

では、アメリカでお客さんが訪れてきて、会議が行われる場合、飲み物は誰が用意しているのでしょうか。

通常は、秘書やオフィスの事務業務を専門に行う職種の方がこうしたことを引き受けています。
ただ、お客さんが来たのを見計らって一人一人に温かいコーヒーを出すということはせず、会社のキッチン(日本でいう休憩室)にある冷蔵庫から、会議が始まる直前に、一人分用の小さなサイズのペットボトルの水や缶のコーラ、ジュースを適当に取り出して会議室に置いておくだけです。
また、コーヒーのような温かい飲み物は、持ち運び可能なコーヒーメーカーを会議室に運び、紙コップやミルクやお砂糖を横に並べておしまいです。

そして、お客さんは、会議室に到着したら、各自で自分が好きな飲み物をとって着席します。
それも、相手からどうぞと言われるのを待たずして、先にとってしまって構いません。

会議が終わった後の片付けも、秘書やオフィスの事務業務を専門に行う職種の方がやってくれますが、夕方まで長引いてしまった会議の場合は、秘書の方たちは先に帰ってしまうので、オフィスの清掃係の方が片付けてくれます。(アメリカのオフィスでは、夕方6時を過ぎた頃から、オフィスの清掃業務の委託を受けている人たちが一斉に、各ゴミ箱のゴミ捨てやトイレ掃除等を行ってくれます。)

こうした事情からも分かるように、アメリカ社会は色々なことが効率化されていて、余計な仕事は徹底的に省かれています
また、職種の専門性が貫かれていて(職務の専門性については、こちらの過去記事をご参照ください。)、秘書や事務業務を担当する人以外の人が、自分の仕事とは直接関係ない雑用のようなことをすることは要求されません。特定の職種に従事してもらうために、それなりのお給料を払って雇っているのに、そのお給料に満たない、その職種でない人でもできる仕事は、やる必要がないという考えなのです。

こうした小さなことを一つとっても、アメリカと日本ではその考え方が大きく異なっていますが、アメリカ流のほうがいたって効率的で理に適っているように感じています。


0

-NYから日本を考える, NYで働く

© 2024 NYに恋して☆