セントラルパークの中にお店を構え、ニューヨーカーのみならず多くの人々に愛されてきた老舗レストラン、Tavern on the Green(タバーン・オン・ザ・グリーン)が、昨年末の2009年12月31日、33年の歴史に幕を閉じました。
LeRoy一族が経営するこのレストランは、豪華な内装と伝統的なアメリカ料理で知られ、常にニューヨークのトップレストランの一角を占めていました。日本のガイドブックにも必ず掲載されているし、映画等に登場する機会も多かったので、観光客の間でも有名レストランでした。
会社のパーティー、そして絶好なロケーションということもあり結婚パーティーにもよく使われていたようです。
営業最終日は、大晦日ということも相まって、このレストランに思いを寄せる多くの人々で賑わう店内が、テレビでも放送されていました。
こんな歴史と伝統あるレストランがなぜ閉店に追い込まれてしまったのかというと、なんと経営難から2009年9月にChapter11、いわゆる会社更生法を申請したからです。
そして、2009年12月末までとなっていたここの借地権を、公園管理局が延長しないことを決定。その借地権は、同じくセントラルパーク内でレストランを経営するセントラルパークボートレストランのオーナーの手へ渡ることとなりました。
しかし、ここで不思議なのが、タバーン・オン・ザ・グリーンの経営の実態。
2009年の数字は明らかとなっていませんが、2008年は36百万ドル(約36億円)もの収益を生み出しているそうです。他のレストランと違い、公園管理局への借地料、労働組合への拠出費用があったことを考えても、破産に追い込まれてしまったのには疑問が残ります。財務諸表を一度のぞいてみたいです。
そして、この地では、今年3月には新オーナーの下で新しいレストランがオープンするため、1月13日から15日の3日間、ファンへの最後の機会としてレストランが一般公開され、同レストランのとある広間では、レストランの貴重な品々がオークションへかけられました。様々な債務者への返済にあてる資金を集めるためです。
このレストラン、私は11年前に初めてNYへ旅行で来たときから知っていたのですが、シンプルな外観からは想像できないぐらい高級レストランであったため、しかるべきときが来たらぜひ行ってみたいと思い、いまだ足を踏み入れたことはありませんでした。
しかし、今回が最後の機会なので、カメラ持参で中へ入ってみました。
そして入ってビックリ!すべての床に敷き詰められたじゅうたん、天井のあちこちに下がる豪華なシャンデリア、壁一面を埋める西洋画、あちこちに展示された豪華な鹿のオブジェ(鹿がお店のマークであるため)。
当初の想像を超えた、現代のレストランとは思えない空間が広がっていました。
ただ、同時に驚いたのは、それら全ての品々に1つ残らず、番号をつけたタグがつけられていたこと!お店の看板、窓ガラス、小さな置物、食器…、店内にあるものは全てオークションの対象となっていました。そして、オークション会場では、番号順に、機械的に、ものすごいスピードで競売が進んでいました。
そして、競売にかけられた品々を見てみると、こんなものまで。
お店の看板
お寿司も出されていたのでしょうか。
輝く鹿の耳にもタグがつけられています。
伝統的なものを守る一方で常に変化を求めるNYにおいて、歴史ある遺産は大切にしていかなければいけないと思いますが、一族の放漫経営により、NYの価値あるものが失われてしまったのは、本当に残念です。