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コインランドリー文化から考えるNYのあれこれ

実はあまり知られていないかもしれませんが、マンハッタンのアパートの95%は、自宅に洗濯機と乾燥機がついていないです!
NYで洗濯機がついているアパートに住んでいると聞いたら、どこの富豪か、どれだけの家賃を払っているだろうと思ってしまうほどです。
それぐらい、この街で洗濯機付きのアパートに住んでいるというのは珍しいことです。

私自身、12年前、この街に引っ越して来たとき、その事実にとても驚きました。
NYの色々なことに馴染んだ今でも、自宅に洗濯機がない生活には慣れません。

一見おしゃれに見える古い建物は不便なことがいっぱい。

インターネットの発達など、これだけ人々の生活が便利になっているのに、なぜNYのアパートには洗濯機がついていないのでしょうか。
それは、NYのアパートの排水事情にあります。

NYは石造りの建物が多く、こうした建物は、丁寧に補修を重ねながら当時の状態を保っています。
それがNYの美しい街並みを作っている所以でもありますが、建物内部のパイプなど見えないところは相当な古さです。
もちろん、改修工事等行っていますが、それでも、全世帯が洗濯機を自宅で回すことに耐えられるような排水設備にはなっていないのです。

最近建てられている近代的な外観のマンションの中には、アパートの中に洗濯機を置いているところもありますが、決して全てのマンションがそのようにはなっていません。
今まで多くの友人の家に遊びに行ったことがありますが、洗濯機付きの部屋に住んでいた友人は、片手で数えられるぐらい少数派です。

歴史的な古い建物でも、大型な建物になると地下にランドリーがあって住人が洗濯できるようになっています(有料。しかも洗濯機と乾燥機別)が、小さな建物ではランドリーがあるところは限られています。そのため、物件紹介のページでも、ランドリーがある場合、あえて"Laundry in the building"と宣伝できてしまうほどです。

ランドリーのないアパートに住む人たちは、近所のコインランドリーで洗濯をすることになります。
コインランドリーのオーナーは多くの場合、中国系を中心とする移民です。ファミリービジネスのような形で長いことコインランドリーを営んでいるのです。

とっても古いコインランドリーの入り口。

NYには次々と新しいレストランやカフェができていますが、コインランドリーだけは時が止まったかのよう。店構えや機械がとても古く、まるで私が生まれるはるか前の昭和の初期の頃のようなイメージです。

私が現在住んでいるアパートの周りにはいくつかランドリーがありますが、一番近いのは家から1ブロックのところ。
中国人夫婦が経営しています。親切な夫婦なのですが、洗濯機、乾燥機ともに古いに輪をかけたように古く、パンデミックの時は少し気になって家から3ブロックのコインランドリーに行ったり、手洗いしたりしていました。

家からたった3ブロックと思われる方もいるかもしれませんが、実際のところはそこを3往復しないといけないのです。
NYのコインランドリーは洗濯機と乾燥機が別。そのため、洗濯機が回り終わる30分の間そこで待っていたくない場合には、一度家に帰り、洗濯が終わった頃に、乾燥機へ移すために再度出向きます。乾燥機は5、6分単位で調整できますが、18分ぐらいは必要です。
もし、乾燥機の作業中もその場で待っていたくない場合は、また乾燥が終わる頃に取りに行かないといけないのです。
気が遠くなるような作業のため、面倒くさがり屋のアメリカ人の多くはなんと1ヶ月分もの洗濯物をまとめて、大きなカゴで月に1度洗濯へと繰り出します。それも面倒という人は、コインランドリーの有料サービスを利用して、コインランドリーのスタッフに洗濯から畳む作業までをお願いすることもできます。


NYで一般的なコインランドリーの店内


こちらは乾燥機です。NYでは洗濯機と乾燥機が一緒になった機械はありません。。

私の家の近所のコインランドリーですが、奥さんが無愛想で挨拶してもほとんど返答がありません。
ただ、旦那さんは親切だし最近またそのコインランドリーへ行き始めたのですが、ある日の夕方ランドリーへ入ろうとすると、5、6歳のその家の子供に突然話しかけられました。お店がもうすぐ閉まるから今からだと乾燥まで間に合わないと教えてくれようとしていたのです。
お店のドアに貼ってある営業時間からはまだ十分間に合うはず。おかしいと思って店番をしていた奥さんに聞こうとしたら、全く返事が返ってきません。そして、その小さな息子が全部通訳してくれて、会話が成立しました。

その時初めて知ったのですが、その奥さんは、英語が全く話せなかったのです。多分、Hi, how are you?ぐらいしか分からず、ランドリーのお客さんとの定番の会話もどうやらできないようです。
私は常々無愛想だと思っていましたが、そうではなく、英語が話せないために、こちらが話しかけても反応がなかったのです。

家から3ブロックのランドリーの方がずっと綺麗ですが、私はこの哀愁漂う家により近い汚いランドリーが気に入っています。
本当に時間がないときは頼むと、洗濯機から乾燥機へ移動する作業をしてくれたり、何かあったらテキストで連絡ちょうだいね、なんて言ってくれます。チップ社会のアメリカ。少しでも何かしてもらったらチップを払うのが当然の文化なので、先日も乾燥機へ移動してくれて乾燥機を回しておいてくれたお礼に数ドルのチップを渡そうとしたら、頑なに拒否して絶対に受け取ってくれませんでした。
そんな人間味溢れるこのコインランドリーはNYでも珍しいかもしれません。

NYにいると多様な人種、様々な境遇の人たちがいて、そうしたことからNYを人種のるつぼと呼ばれる面白い街になっていますが、そこで暮らす人たちは様々です。長く暮らしているから英語が話せるという訳では決してありません。
きっとその夫婦も何らかの事情があって、祖国を離れて思い切って渡米してきたのでしょう。
店内にはいつも中国語の音楽が流れ、店番をしているとき、夫婦は必ず中国語のテレビ番組を熱心に見ています。
そんな彼らの姿を見ていると、いろいろな思いが頭を巡ります。

 


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