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アマゾンの大幅な軌道修正から考える店舗ビジネスの未来

世界の多くの国で絶対的な存在感を示しているアマゾン。
1994年にオンライン企業として始まったアマゾンは、瞬く間にその存在感を発揮し、今や一代で築かれたシリコンバレーのテック企業の代表格となっています。

アメリカで暮らしていてアマゾンのサービスを利用したことがない人はいないのではないかと思うほどの絶対的な地位を築いているアマゾン。

オンライン企業としてのイメージを塗り替えたのは、2017年のWhole Foodsの買収でした。ホールフーズと言えば、オーガニック商品を取り扱うことで知られるアメリカを代表するスーパーマーケットです。オンラインに特化していると思われたアマゾンがホースフーズを買収したときには、全米中のメディアが大きくそのニュースを報じました。

アマゾンのオフライン事業への兆候は、amazon booksという本屋さんを2015年にオープンしたときにあったのかもしれません。この本屋さんは、アマゾンのプライム会員であるか否かで商品の値段が違うという驚くようなコンセプトを導入したことで話題を呼びました。その後、amazon 4 starというアマゾンのサイトで4つ星以上の評価を得た商品だけを取り扱うお店もオープンしたアマゾン。

SOHOの一等地にあるamazon 4 star。

 

ニューヨークにも上陸したamazon books、amazon 4 starともに何度か行ったことがありますが、正直あまり繁盛しているような気配は見えませんでした。そのため、どのようなマジックでお店を経営しているのだろうか、といつも不思議に思っていましたが、今月2日、アマゾンは、この両方の事業からの完全撤退を発表しました。

抜群の資金力により人通りの多い一等地に店舗を構え、絶対的な地名度があるアマゾンでさえも、本屋さんと小売店の実店舗事業がうまくいかなかったことに驚かれる方も多いかもしれませんが、ニューヨークの街で来店者が多い路面店を見ていると、自ずとその理由が見えてくるような気がします。

化粧品のデパート的存在、SEPHORAの店舗前でポップアップを行うRose Incという化粧品ブランド。何らかの飲み物を無料で配っていて、凍えるような寒さの中で長蛇の列。

 

実店舗とオンラインでの大きな違いは、「体験」にあると思います。
オンラインはある意味、無機質な世界。検索バーに欲しい商品名を打ち込み、さらには、消費者の評価が高い商品や自分の予算で絞り込みをかけ、最初の数ページに出てきた商品を見比べてみる、という単調な作業で商品を買っている人が多いのではないでしょうか。

一方で実店舗では、手触り、店員さんとの会話、お店の内装、店内のお客さんの雰囲気など、あらゆる要素が絡み合って、人はモノを買うか買わないか、という決断をしているのではないかと思います。洋服であれば、綺麗な店員さんが着ている洋服に興味が湧いたり、雑貨であれば、よく売れているものに目が行ったり。また、明るくて開放感ある店内であれば、よりそのお店の商品に興味が湧いてくるのではないでしょうか。

アマゾンは、もしかすると、オンラインでの無機質な空間を実店舗でもそのまま行なってしまったのではないかと、今回のニュースを見ながら感じました。なぜなら、私自身がamazon booksやamazon 4 starに行ってワクワクしたことがないからです。綺麗な店舗にきちんと積み上がった在庫。実店舗としてきちんとしていたことは間違いないのですが、実店舗だからこその魅力ある商品の見せ方はできていなかったのではないかと思います。

今日、SOHOをふらっと歩いてみたところ、リサイクル素材で作られた水着や下着を販売するアパレルの路面店を見つけました。最近気になっていたお店で、いそいそと店内に足を踏み入れてみたのですが、あまりにポップな作りにびっくり。

こちらがそのお店、PARADE。去年12月にSOHOにオープンした路面店第一号。当初は今年3月までの期間限定の予定でしたが、延長の可能性もあるようです。アメリカのブランドですが、入り口入ってすぐに、セーラームーンを彷彿とさせる巨大な絵がかけられていました。よく見ると、メインキャラクターの赤いヘアゴムには、PARADEの文字が。

そこにいるだけで気分が高まるようなカラフルな店舗。

パンツの陳列方法もおしゃれ。

 

正直なところ、商品の手触りはあまり私が好きなものではなく、商品の良さは今回の訪問からは分からず、私は何も買いませんでしたが、このお店に入ったことでエネルギーチャージされたことは間違いありません。

私の短い滞在中にも、次々とお客さんがやって来ては商品を熱心に選んでいました。

リサイクルにも熱心に取り組んでいるPARADE。別会社のパンツもリサイクルボックスで受け付けてくれるそうです。

数ヶ月閉まったままのamazon go。無人のコンビニです。改札のような入り口でアマゾンのアプリをかざすことで入店できる仕組み。空港の売店のような無味乾燥さが私は苦手で、家の近所にあるものの結局一度も足を運びませんでした。

 

新型コロナウイルスによるパンデミックをきっかけに、以前よりもオンラインビジネスへの注目が集まっていますが、私自身は小売店の可能性を信じています。モノに込められた作り手の想いやストーリーは、オンラインでは完全に感じ取ることができないからです。

こんな時代だからこそ、より気分を高めてくれる明るい小売店がどんどん増えてくれることを願っています。


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