NYから世界を考える

アメリカに押し寄せるインドの波

統計学的な数値を調べたわけではありませんが、この2年ほど、感覚的に、アメリカ企業で働くインド人が増えているように感じています。

「ゼロ」の概念を発明したインド。アジア人の中でも、特に数字に強く、ITの分野で活躍する人が多いです。
東京にも10年弱前ぐらいから、インド料理のお店が増えたのは、インドからやってくるコンピュータ技術者の増加に呼応しているという記事を読んだことがあります。

マンハッタンには、Lexington avenueの26丁目から29丁目ぐらいにかけて、リトルインディアという、インド料理屋さんが立ち並ぶ小さなインド人コミュニティーがあります。このリトルインディアは、主に、はるか前にアメリカに移住してきたインド人2世、3世といった世代の人たちが経営していて、NYには、両親ともにインド人ですが、自身はアメリカで生まれたという若い世代の子たちも多くいます。
こうした若い子たちは、家ではインドの習慣に倣い、インド料理を食べて育っても、第一言語は英語で、アメリカ人たちに混じって普通の学校に通い、アメリカ社会の中で成長しているので、感覚はいたってアメリカ的です。

ただ、驚くことに、ここ2年ほどの間にアメリカで増えているインド人は、アメリカで働くためにインドからやって来ている人たちです!
彼らは、アメリカの会社とのコンサルティング契約により、期間限定で、アメリカの会社のITシステム構築やその導入支援のためにアメリカに働きに来ています。

私はITの分野は全く分かりませんが、インド人ならではのすぐれた技術感覚に加えて、きっとアメリカ人よりも安いお金で仕事を依頼することができてコスト削減につながること、アジア人特有の真面目さや几帳面さを持っていること、英語はあくまで第二外国語ですが、英語でのコミュニケーションができる人材が多いこと、などが、アメリカ企業がインド人に仕事を依頼している背景かもしれません。

同じインド人でも、アメリカ生まれのインド人とインドから一時的にアメリカにやって来ているインド人は、意外と簡単に見分けることができます。

・前者のインド人は完璧な英語を使いこなしていますが、後者のインド人の英語は第二外国語としての英語です。
・前者のインド人は、家ではインド料理を食べていても、外ではアメリカの食生活に慣れ親しんでいるので、お昼もサンドイッチやサラダ、ハンバーガー、ピザといったアメリカ系食事を好みます。一方、後者のインド人は、いつもお昼には手作りのインド料理(カレーや野菜の煮込んだものなど)を持参し、電子レンジで温めて食べています。ヒンズー教徒なので牛はタブーのためハンバーガーは論外、そして、インド南部出身の人はベジタリアンも多いので、外で自分の口にあった食べ物を探すのは難しいようです。
・前者のインド人女性は、インドらしいデザインの柄物の洋服を着ますが、後者のインド人女性はいたって地味で、柄なしの黒やベージュといったコンサバなスタイルです。
・感情表現豊かなアメリカで育っているからか、前者のインド人は、にっこり笑ったりと表情の変化が多いですが、後者のインド人は基本的に無表情でむっつりしています。

高度なIT技術でアメリカ企業に貢献してくれるインド人を支援するために、ビザの法整備の動きも昨年ぐらいから話題にのぼっています。
一般に海外からやってきた人がアメリカで就労する際に保有しているH1Bビザというビザ(私もこのビザです。)は、法律上、その配偶者はアメリカ国内で働くことができません。インド人女性の高学歴化が進むにつれて、インド国内で良い仕事に就いてキャリアアップを図っているインド人女性も多いそうですが、旦那さんのアメリカでの就労に伴って渡米すると自らがアメリカでキャリアを継続することができないため、奥さんの反対にあって、アメリカ行きを断念する男性も多いようです。そういった事情により、良い人材のアメリカ国内への流入が妨げられてしまっていることを危惧したアメリカ政府は、一定の条件下でのH1Bビザの配偶者の就労許可や、インドから多くの優秀なIT技術者がアメリカで働けるように、H1Bビザの年間発行枠の拡大も考えているようです。

いまだアメリカ国内での失業率は数パーセントありますが、それでも、シリコンバレーを中心としたITビジネスの発展のために、優秀な人材を海外から獲得しようというアメリカの姿勢は、海外での就労機会を求めている人にとっては良い刺激になるし、そうした柔軟な国家政策は、長期的に見て、国の発展に寄与していくと思います。


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