コロナウイルス発生によるパンデミックでニューヨークの街がロックダウンとなったのは、2020年3月のこと。
その後、外出制限を含む様々な規制によりすっかり街はゴーストタウンと化し、この先マンハッタンの街がどうなってしまうのかと思ったのは、なんだかだいぶ昔のことのようです。
マンハッタンの街を華やかに彩っていた富豪やセレブたちはいち早く高級別荘地のハンプトンやフロリダに避難し、一般市民は自宅に篭り、街にはホームレスとEmergency workerと呼ばれる人々のライフラインを支える仕事をしている人たちしかいない時も長く続きました。
そんな時に引っ越しをする人もいないため、マンハッタンの不動産は大暴落。その下落率はリーマンショックの時よりもひどいと言われるような状況が続きました。大家さんはこぞって1、2ヶ月分の家賃を無料にしたり(フリーレントと言います)、アパートのリノベーションをしたりして、テナント獲得に躍起になっていました。
そして、少しずつ日常生活が戻ってくるにつれて、完全リモートワークであることを利用して、今までマンハッタンに住めなかった若者たちが友達とルームシェアをするなどの形で続々とニューヨークへやって来るようになったのです。いずれマンハッタンの街が復活した時には家賃はまた元の高値に戻ってしまいますが、1年だけの楽しみ、と割り切っていた人もいるようです。
ニューヨークの街歩きの楽しみは、おしゃれな建物を見ること。先日ウェストビレッジを散歩していて発見したおしゃれな建物。その場でGoogleマップで調べたら社交クラブでした。間違いなく数億円はする建物。
そんな状況が終わりかけに差し掛かった去年の夏、私もブルックリンからマンハッタンへ戻ってきました。
最近、私が住むビルの管理会社の人と話す機会があったのですが、ビルのシステムで私の家賃を見て、「こんな破格な値段でこのビルに住んでいる人いないよ!」と驚いていました。
去年の秋頃からでしょうか。学校の対面授業が再開するにつれて、別の都市へと避難していた家族も戻ってきて、マンハッタンで以前のようにおしゃれな人たちを見かけるようになりました。そして、待ってましたとばかりに家賃は上昇を続けていったのです。
NYの賃貸は1年契約のところが多く、破格の値段で入居していた人たちが更新の時期を迎えた時には、数百ドルもの値上げを要求された、という話もよくニュースになっていました。ただ、マンハッタン全体の家賃が高騰しているため、引っ越しても良い条件の物件は見つからないと、泣く泣く値上げを飲んだ人も多いようです。
昨日偶然遭遇した撮影現場。実物の女性は、驚くほどのオーラ。こういう素敵な人たちは見ているだけで楽しいです。
需要と供給で成り立つマーケット。こんなに需要があるのであれば、街は以前よりも人で溢れているように思われる人も多いと思いますが、実際のところ、肌感覚ではそうは思えません。完全出社を義務付けている会社はまだまだ少数派で、多くの人がハイブリッドと呼ばれる週に2、3回の勤務体制。一体どこからそんなにアパート需要があるのかと思わざるを得ない状況です。
不動産業界に長いブローカー数人と話す機会があったので聞いてみたりもしましたが、ブローカーも口を揃えて分からない、と言うような状況だったのです。しかし、数日前に発表されたFRBによる大幅利上げの影響で、そんな買い手市場も少し沈静化を始めたようです。
あまりの急展開にびっくりしていますが、これだけ目まぐるしく状況が移り変わっているのは、テンポが早い街、ニューヨークらしいな、とも感じています。
私の大家さんは、こんな状況にも後押しされたのか、この物件を売却することを決め、私はこの夏に契約更新をするかどうかを悩む余地なく引っ越しをしなければいけなくなりました。今年の夏で13年目となるニューヨークですが、なんと次の引っ越しは7軒目。転勤族でもなかった私が一つの都市でこんなにも引っ越しをしていることに自分でも驚いていますが、毎回引っ越しのたびに感じるのは、自分のライフステージがその時の自分に合わせて不思議とステップアップしていっているのです。そんなこともあって、荷造りの手間よりも、新居への想いに胸躍る毎日です。
引っ越しのことを我が猫はどこまで分かっているでしょうか。今朝は不思議な格好で棚の中を物色(笑)