日本でも誰もが注視しているトランプ政権の行方。あっという間に就任から100日が経過しました。
どの国もそうだと思いますが、その国の政治は、過去の歴史が築いてきた道の延長線上にあるので、今という点だけを見て語ることは難しいと思います。
国際情勢をとても分かりやすい切り口て解説してくれて、私も著作をいくつか読んだことがある有名な博識高い方の本を週末に読んでいたのですが、トランプ政権の移民政策についての「日本サイド」から見た理論展開に、目を奪われました。
そこには、こう書いてありました。
トランプ政権の移民政策を行き過ぎていると批判する人たちもいるけれど、トランプ政権は移民に対して慎重な日本のようにしたいだけとも言えて、トランプ政権の移民政策を批判する人たちは、自覚せずに日本の移民政策を批判していることにもなるのです。
果たして本当にそうなのでしょうか?
この見解で、まず最初にあれっと思ったのは、太古の時代からの土着の人たちの子孫たちで成り立っている日本という島国と、近代に入って、ヨーロッパを中心に各地から流れ込んできた人々(=移民)が土着のインディアンたちをよそに追いやって建国したアメリカという、全く「移民」という概念が異なる国を同じ土俵で議論してしまっていることです。
日本では、ちょっとでも日本人と違う血が混じっていたり、日本語がネイティブでなければ、すぐに「部外者」となってしまいますが、そもそも移民で成り立っているアメリカには、本当のアメリカ人はネイティブのインディアンたちだけで、今の多数を占める人々、トランプ氏の先祖やトランプ氏の奥さんもれっきとした移民なのです。
日本から見たら、オバマさんが移民に対して寛容すぎて、トランプ氏は本来あるべき姿に戻そうとしている、と見えてしまっても致し方ないかもしれません。
しかし、アメリカから見た「移民対策」の実情は大きく異なります。
私の遠い知り合いは、数年前に、自身が持っているビザとは異なる商売をしていたことが移民局に何らかの形でばれてしまい、日本への一時帰国からNYへ戻ったときに空港で摘発されて日本へ強制送還されてしまっていますし、別の方は、駐在員ビザという移民局から疑われるリスクがかなり低いビザ(駐在員は一定期間アメリカに滞在して帰国することが分かっているため、その後不法滞在したりするリスクはまずないため、とてもリスクの低いビザなのです。)だったにも関わらず、ビザの更新のときに審査にひっかかって苦労していましたし、私が保有しているH1Bという通常の就労ビザも審査がおりた後の定期抜き打ち検査は年々強化されています。
これらは、全てオバマ政権時代の話で、オバマさんが移民に寛容でほぼ何も対策をしてこなかったというのは、大きな間違いです。
また、不法移民が完全に悪い、と決めつけるのも早計です。
アメリカ経済は、不法移民が下から支えていることで回っているのです。
日本で3Kと言われるような仕事は、アメリカでは不法移民が担っています。また、NYのレストランのような場所でも、スタッフは不法移民が多く、彼らが安い賃金でも良いからと働いていてくれるおかげで、物価も今の水準で抑えられているのです。
もし、安い賃金でお皿洗いや掃除をしてくれるような不法移民たちがいなかったら、もともと物価の高いNYの物価はさらに跳ね上がっているでしょう。
日本でも、ここ数年、例えば介護のような仕事を海外からの労働者に頼もうとする動きがあると聞いたことがありますが、日本が今行おうとしているようなことは、アメリカでは既にずいぶん前から起こっていることなのです。
法を犯すことは良くないことだけれども、不法移民で経済が支えられているので、不法移民を完全に排除することができないという矛盾を抱えたアメリカ社会。
オバマさんは、そういったことも承知で、不法移民だから即国外退去とは決して口にしなかったのです。
それに対して、トランプ氏は、特定の国からの移民を、不法かそうでないかを問わずに疑ってかかる姿勢を見せたために、大きな反発を招くことになりました。
以前トランプ氏が出した大統領令(詳細はこちらからどうぞ)は、裁判所で違憲判決が出て、司法によりストップがかかったために、いったん棚上げされました。
こちらです✨