ここ数日、オバマケアを改正しようとしているトランプ政権の動きがメディアを賑わせています。
オバマケアは、オバマさんが8年間の大統領在籍中に成した数多くの功績のうち、間違いなくトップクラスに入る、アメリカの健康保険制度を変えた画期的な法案です。そんな法案をトランプ政権は確固たる根拠があるわけでもないのに批判し、改正案を議会に提出しようとしているため、民主党だけでなく共和党の議員の中からもトランプ政権のやり方に反対する人が現れたりと大混乱が続いています。
オバマケアがどれほどアメリカ国民にとって歴史的なものであるかを理解するためには、日本とは大きく異なるアメリカの保険制度を知っておく必要があるでしょう。
オバマケアが導入される前の日米の保険との違いを簡単に並べてみると、
・日本と異なり、アメリカでは国民皆保険ではなく、保険に入るか入らないかは個人の選択。
・そのため、アメリカでは、低所得者の多くは健康保険に入らないという選択をしてしまう。
・アメリカの医療費は日本の何倍も高額(例えば、ただの風邪でお医者さんに見てもらっただけでも、2,3万円は請求されてしまうし、1泊入院すると10万円ぐらいはすると言われています。)のため、保険に加入していない低所得者の人たちを中心に、体調が悪くても我慢して病院に行かず、病院に行ったときには手遅れというケースも多い。
・保険に入っていない人が万が一事故にあったり等の理由で緊急で病院に行かなければいけない場合、もともと保険に入らないという選択をするほど所得が低いので、病院からの高額な請求を払えない事態も発生してしまう。そのため、本来患者さんを平等に扱わなければいけない病院も、保険の有無によって患者さんへの対応を変えるという事態も。
こうした事態に対処するために、オバマさんが編み出したオバマケアの特徴は、国民皆保険。会社を通じて保険に入ることがない自営業者の人や正社員でなく会社の保険にもともと入っていない人たちに、国(州)が提供する安価な健康保険への加入を義務付けたのです。加入しない人には、保険料の支払いよりも高い罰金が課されることとなったため、自然と今まで無保険であった人たちは保険に加入することとなりました。
こうして22万人ものアメリカ人が恩恵を受けたと言われています。
そんなオバマケアを大統領選挙活動中から根拠もなく批判してきたトランプ氏。オバマケア改正法案を議会で通そうとしていますが、共和党員の中にもトランプの法案に反対にする人がいるために、賛成票が足りず、法案が通せないという状況になっています。
数日前までは、2008年の大統領選挙の共和党候補として民主党のオバマさんと戦ったマケイン氏の1票が入れば法案が通る見通しで、手術を終えて自宅療養中のマケイン氏の快方を待っていたトランプ氏ですが、その後法案に反対票を投じることを表明した共和党員が数人現れたことにより、現時点では法案成立の見通しはたっていません。
トランプ氏と同じ共和党員でありながら、賛成できない法案には断固として反対の意思を示すという共和党員がいることは、いい加減な法案は今後も通らないことにもつながり、良い傾向だと思います。今後もこのニュースの行方に注目していきたいと思います。