シリコンバレー発祥で今や世界的企業に成長したアメリカのスタートアップ企業は多くありますが、その代表格のひとつがアマゾン。
アマゾンはオンラインショップとして始まりましたが、2017年のWhole Foodsの買収をきっかけにスーパーマーケット事業にも進出。Whole Foodsでは今やプライベートブランドの商品が他社製品よりも目立つ位置に積極的に置かれたり、アマゾンで注文した商品を受け取ることができたりと、アマゾン色が強まっています。
そんなアマゾンが今特に力を入れているのが、レジレス店舗、すなわち、レジのない店舗です。アメリカの小売業界の最新動向を発表する場として毎年1月にニューヨークで開催されているNational Retail Federation (NRF)のBig Showでは、2024年のトピックの一つとして、アマゾンのレジなし店舗であるJust Walk Outについて大きく紹介されていました。
アマゾンが初めてレジレス店舗であるAmazon Goを開いたのは2018年1月。Just Walk Outという技術を用いて店内に多数設置されたカメラでお客さんの行動をモニタリングしているため、お客さんは、お会計を済ませることなく退店できることがその売りでした。
Amazon Goの店内は、日本のコンビニさながら。コンパクトな規模で、アメリカ人が好むスナック菓子や飲み物を中心に取り扱っています(もちろん、いろんな意味で日本のコンビニのほうがずっと便利なことは間違いありません!)。
お会計をせずにお店を離れるのはなんとも不思議な感じでしたが、レジに並んだり、お財布を開いたりする手間が省けるのはなんとも便利。
退店から数時間後に、アマゾンのアカウント内にレシートが表示され、アマゾンのアカウントに登録してあるクレジットカードで決済が行われていました。
アマゾンはこのJust Walk Out技術を自社店舗だけでなく、他社の店舗にも提供することを進めていて、昨年、エブリデイデニソン社と共同で開発したRFID(電子タグ)技術を、西海岸を中心にスタジアムなど集客が多い場所内の他社のレジレス店舗に提供してきました。
他社を圧倒的にリードしていたはずのアマゾンのレジレス店舗ですが、なんと、今月あたまに購入商品の追跡は、実際にはインドにいる700人ものスタッフによって行われていたことが明らかになりました。店内のカメラによるAI技術でお客さんの行動を解析し、お客さんが棚から取りだしたり棚に戻したりした商品、そして、最終的に手にして退店した商品を追跡できるとしていましたが、実は、1000件の取引に700人ものインドにいるスタッフによるレビューが介在していたそうです。思ったように技術の進歩が進まなかったため、なかなか人的介入を減らすことができず、Just Walk Out技術を使用したレジレス店舗はあきらめるとした今回の発表は、AI技術を使っているはずだったのに実際は人がやっていたということを含めて、関係各所に大きな衝撃を与えました。
私自身のAmazon Goでの買い物も、店内での私の動きをとらえたカメラの映像を実はインドのスタッフが見てレシートを作っていたと思うと、驚きを隠せません。
ChatGPTの普及など、AI技術はITに疎い私の生活にも少しずつ入ってきていますが、今後、AI技術がどのようにして広まっていくのか、これからも注目していきたいと思います。