サッカー日本代表のW杯での大躍進が注目を集める今日この頃。アメリカ人のサッカー熱はあまり高くないこともあり(アメリカでfootballと言うと、アメフトを指すので、あえてsoccerと言わないといけません)、2009年の渡米以降、あまりサッカーの試合を見る機会に恵まれませんでした。
東京で過ごした学生時代、サッカー観戦に明け暮れていて、日本代表の選手のみならず、J1チームのスタメン全選手を知っているほどだった私が本格的なサッカー観戦から離れてなんと15年以上。しかし、お膝元アメリカでのW杯開催で街が少しずつ盛り上がる中、日本の初戦オランダ戦は、近所のバーで観戦しました。それに先駆けて、まずは、日本代表の先発メンバーの予習から。
すると、驚くことに、代表選手のほとんどがヨーロッパの有名クラブでプレーしていることを知りました。私が大好きだった中田英寿選手がイタリアでプレーしていた頃には、サッカー日本代表選手の中で、「海外組」と「国内組」という区分けが存在し、日本代表の親善試合に参加する海外組のスケジュール調整や時差対策が常に話題となっていました。
今やそのような概念は死語。この15年の間の日本サッカーの進化を思うと感慨深いです。
日本サッカーの発展は、海外からの優秀で熱心な監督たちによって支えられてきました。その一人が、1998年から2002年まで日本代表監督として日韓W杯でも指揮をしたフィリップ・トルシエさん。戦術だけでなく、試合でのメンタリティなど、トルシエ監督に影響を受けた選手は多いはずです。
そのトルシエさんが、今年4月にご自身初のNY訪問を果たされました。きっかけは、サッカーファンのNY在住の日本人女性がパリのオリンピックにサッカー観戦に行った際に偶然トルシエさんと知り合ったこと。NYでW杯をもっと盛り上げたいとの想いから、その方がトルシエさんにNYでの講演会を依頼されたのです。
日本だけでなく、アフリカやアジアの国々の代表チームでの指導経験があるトルシエさんですが、日本での経験が非常に印象深かったそうで、スクリーンに投影されたスライドでは、日本代表のページに何度も戻ってお話をされていた姿が印象的でした。

他国チームとの違いも熟知しているトルシエさんの目から見た日本人選手の印象は、話をよく聞くことと規律がとれていること、だそうです。私たちにとっては一見当たり前のことのようですが、日本人のようにきちんとした選手たちがそろった国はあまりないそうで、日本人選手は監督の話をよく聞いて、規律よく動くから強くなっている、という話を何度もされていました。陽気な国民性のアフリカのチームの選手たちは、試合に負けた直後でもダンスしたりあまり深刻になっていない、なんていう話もしていました。日本がW杯に出始めた頃は夢だった決勝トーナメント進出が今や当たり前となっているのは、こうした日本人選手の特徴も大きく寄与しているのでしょう。

講演会の前には、懇親会がありました。NYならではの地下鉄の遅延で到着が少し遅れてしまい、小走りで会場へ向かうと、なんと、懇親会会場の入り口でトルシエさんが参加者一人一人を出迎えていらっしゃいました。NYで数のイベントに参加したことがありますが、こんなことは初めてです。
皆がどういう経緯でこのイベントに来てくれたのか知りたかったそうで、私の前にいたアメリカ人男性は、サッカーのコーチをしているからトルシエ監督のコーチ論について知りたいと話していました。私は、突然のことでびっくりしつつも、「日本に住んでいた時にサッカーをよく見ていて、特にトルシエ監督が率いた日韓W杯の印象が強いこと」を話したら、長身のトルシエさんは少しうつむく姿で155センチの私に目線を合わせて真剣に話を聞いてくれました。こうしたイベントに来るのは男性が多いイメージがあったのでしょうか。私が日本人と知り、少し嬉しそうでした。
懇親会は一人で参加したので、特に一緒におしゃべりをする人もいず、会場で手持無沙汰にしていたところ、ゲストたちを迎え入れるのが終わり会場内にやって来たトルシエさんが、同じく一人で来ていた別の参加者と私を見つけ、一緒におしゃべりしましょう、と話しかけてくれました!トルシエ監督が日本サッカーを率いていた時代にテレビやスタジアムで熱心にサッカー観戦をしていた頃、まさかその20数年後にNYでトルシエ監督とおしゃべりする日が来るとは、一体誰が想像したでしょうか。
トルシエさんは、日本代表監督の任務を終えた後、世界各国で監督を務め、現在は、フランスとモロッコを奥さんと行き来しながら、ワインビジネスも手掛けているそうです。当時からしゃっきとした印象はありましたが、さすがフランス人。スーツを着こなし、素敵な香水をつけていて、おしゃれなトルシエさんの一面も伺えました。
このW杯での大一番のブラジル戦まであと半日ちょっと。決戦の地は、奇遇にもヒューストン。私が監査法人時代に担当していた日系企業の本拠地で、よく出張で行っていた思い出の場所です。そして不思議なことに、日本代表のキャンプ地はナッシュビルでした。アメリカ国内の主要都市は行きつくしてしまったので、最近はほとんど国内旅行はしない私が去年唯一行った観光地。さらに、年に一度の一時帰国で、つい1週間前には熊野へ旅行を。熊野と言えば、日本サッカー協会のシンボルである八咫烏の神話の舞台。以前から行ってみたかった場所で今回の旅行先に選んだのですが、世界遺産にもなっている熊野三山の一つ、熊野本宮大社には、W杯開催前に日本サッカー協会のご一行が必勝祈願に訪れたそうで、期間限定で応援メッセージを書けるホワイトボードが設置してありました。そして、日本代表やユースチームを率いていたこともあり、現在は日本サッカー協会のナショナルチームディレクターを務める山本昌邦さんが書かれたメッセージのすぐ上に私も応援メッセージを書くというご縁に恵まれました。

「最高の景色に挑む」が山本さんのメッセージ。その上の小さな「飛翔!」が私のメッセージ
日本代表ファン、日本サッカー関係者だけでなく、世界のサッカーファンが注目しているブラジル戦。トルシエ監督も熱い目線を向けてくれていることは間違いありません。