NYから世界を考える

ウクライナ人クラスメイトの12年前の言葉

次々に入ってくる凄まじいウクライナの惨状に世界中の人が心を痛めています。

ウクライナ、と聞いて必ず思い出すのは、私の最初のウクライナ人の友人、Lilyのことです。
12年半前、期待に胸を膨らませてNYへ渡り、最初に通った語学学校のクラスに、金髪のロングヘアー、長いまつげに青い目で、美女の代名詞そのものの彼女がいたのです。

恥ずかしながら、その時私がウクライナについて知っていたことと言えば、旧ソビエト連邦の一部であったこと、ぐらいでした。
クラスには、同じく旧ソ連の一部であったカザフスタンの女性がいて、彼女とLilyがロシア語で会話していたことに驚きました。違う国の人がどうして同じ言葉を話しているのだろう、と思ったのです。

そして、彼女たちを通じて、旧ソ連時代に、ウクライナもカザフスタンの人も共にロシア語が公用語とされていたので、ロシア語が流暢で、それに加えて、地元の言葉(ウクライナ語やカザフスタン語)も話せることを知りました。

私の最初のクラスは、私を含めてNYへ渡ってきたばかりの人たちで、Lilyを含め、カザフスタン、中国、韓国、コロンビアのクラスメイトたちと出かけたり、小さな我が家に彼女たちを招いて和食を振舞ったりして交流を深めました。

きっかけは忘れてしまいましたが、ある時Lilyが、「ロシアは嫌い」と強い口調で話していて、それにカザフスタンのクラスメイトも同調して、「私も嫌い」と言っていたのは今でもはっきりと覚えています。詳細は聞かなかったのですが、旧ソ連の支配下時代に色々と理不尽なことがあった、というのが理由だったと思います。

学校で習った地理の知識ぐらいしか持ち合わせていなかった私には、旧ソ連時代の支配体制やソ連崩壊の意味が全く分かっていなかったので、クラスメイトを通じて、世の中のことを身をもって学ぶことになりました。

ひっそりと静まりかえっているニューヨークの国連本部。今回のロシアの侵攻は、ロシア国民皆が支持しているわけではありません。ロシア国内で反対運動も起こっていると聞きます。プーチンの暴挙が早く阻止されますように。

 

あれから12年半。Lilyは実業家のウクライナ系アメリカ人と結婚して随分前から西海岸に住んでいます。彼女はここ最近頻繁にFacebookでウクライナの惨状を伝える記事や、戦火の中、避難シェルターで生まれた赤ちゃんの記事をシェアしています。
たまたま見た日本のテレビ局のニュースによると、ウクライナにいる18歳から60歳の男性は戦争に駆り出されるため、他国へ避難することができないそうです。国家を守るために武器をとって立ち上がる市民たちのニュースには言葉もありません。

21世紀に第二次世界大戦のような戦争が起こっていることは衝撃的で、一刻も早くロシア軍が撤退することを願ってやみません。今回の出来事には考えさせられることも多いです。欧米諸国vsプーチンという構図が浮き彫りとなっていますが、欧米はウクライナの支持は表明しても軍隊は派遣していません。ウクライナは自国の軍隊、そして民兵で戦っているのです。これを日本に置き換えてみるとどうなるのでしょうか。もし日本が近隣国に攻められたら一体どうなってしまうのでしょうか。全ての国が武器を放棄すれば良いですが、そうではない現状の中で、日本は自衛のためにどのような対策をとっているのでしょうか。不安は募るばかりです。

NYにはウクライナ人も一定数住んでいて、東欧からの移民が多いことで知られるマンハッタンのイーストビレッジという地区には、ウクライナの文化を紹介する博物館もあります。そして、その近くには、ニューヨークで最初のウクライナ料理のレストランとして知られるVeselkaも。私のニューヨークのお気に入りレストランの一つです。12年前、Lilyの出身国の料理を食べようと、クラスメイトたちと出かけて、Lilyが張り切っておすすめ料理を注文してくれたのも良い思い出です。

パンデミックも乗り切って先日行った時にも大混雑していました。ニューヨークでは珍しく24時間営業のお店で、イーストビレッジという土地柄、かつては真夜中には仕事を終えた役者さんたちがごはんを食べに集まっていたようです。ウクライナをサポートするために今夜Veselkaのごはん注文しようとしたら、臨時休業でした。そのお隣のウクライナレストランも休業のようです。家族や親戚、友人たちが今でも祖国にいてレストランを営業しているどころではないのでしょう。

なお、ニューヨーク在住の指揮者の知人によると、今回の件の余波は音楽界にも広がっていて、プーチンを支持する指揮者や音楽家たちが表舞台から追放されようとしているようです(詳細はこちらから)。

一刻も早く戦争が終わりますように。そして、早くウクライナにかつてのような穏やかな日が訪れますように。


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