NYに住む

アメリカ全土を揺るがすアリゾナ州の過激な法律

アメリカには、移民なくして社会は成り立たないほど多くの移民が暮らしています。NYの街を歩いていると、あまりに色々な国の人がいて、街行く人々がほぼ全員日本人という移民がほとんどいない国、日本から来た私にとって、最初はそれはとても不思議な光景でした。
日本人であれば、旅行なら3ヶ月はそのままアメリカに入国できます。つまり、ビザいらずして3ヶ月は滞在することが可能です。

しかし、それ以上の滞在となれば必要となるのが、何らかのビザ。

その種類は、私が現在保有しているF1と呼ばれる学生ビザから、就労ビザ、駐在員ビザ、研究者ビザ、芸術家ビザ等々、多岐にわたります。しかし、これらのビザの取得はとても困難。なぜなら、アメリカ政府が移民に寛大ではないからです。

多くの移民によって国が動いていることは間違いないのに、移民に冷たいというのは何とも皮肉な事実ですが、私も「移民」であるがゆえに、今まで様々な困難に直面しています。
アメリカがなぜ、こんなにも移民に厳しいのかというと、「不法移民」があまりにも多いからです。その数は1080万とも言われ、見過ごすことができないほどの数に達しています。しかし、不法移民はひっそりと暮らしているため(こちらをご参照ください)、その数はそれ以上に及ぶかもしれません。

「不法」というとすぐにでも「強制退去」という発想にもつながりがちですが、異国であるアメリカに「不法」な状態で入国してでも生きていこうと必死な人々のことを思うと、単純に不法移民であるから、という理由で責めることもできないと、こちらへ来てから強く思うようになりました。
アメリカへ入国してくる人々は、大きく分けると2つのパターンに分けられます。アメリカで何かを得たいと思い渡米する人々と自国では暮らせないと思い渡米する人々。前者は、日本人を含め経済的に豊かな国から来る人たちや発展途上国出身でも富裕層で、短期的に英語を学ぶことで自国の発展に貢献したいと思う人々。一方後者は、主に中南米諸国や中東の国々から移り住んでくる人々。
後者の人々は、本来だったら自分の生まれ育った国で暮らしたいかもしれません。言葉も違う国へ家族で移り住むのはなんとも大きな決断でしょう。しかし、自国の政情、経済不安から、母国にいてはまともな生活ができないと思い、この国の地を踏むことを決意します。

きちんとビザを取得して正当な方法で入国できれば一番良いのですが、アメリカはこうした国々へはビザ取得にも厳しい要件を課しているため、結局旅行者として入国したままずっと滞在し、不法移民になってしまうのです。

不法移民という状態はなんとも不安定で、不法であるため、1度出国してしまうと再入国の際に空港でばれてしまうため、一生アメリカから出れない、ということを意味します。
こうした人々がデリを経営したり、清掃業者等のブルーカラーと呼ばれる仕事に従事していることで、このアメリカ社会が動いていることは、まぎれもない事実です。

そんな状況の中で、アリゾナ州が可決した法律は、警官が不法移民と判断した人に対して、路上等で職務質問をすることができるというもので、その主な対象となるヒスパニック系人々へ対する人種差別だとの非難の声が相次いでいます。オバマ大統領もその可決に反対した法案ですが、4月23日に州知事が署名を済ませ、夏から施行の見込み。
ここ1週間ほど、アメリカのどのメディアでも毎日のようにこの移民法の是非が報じられています。


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