前回、前々回に続いて、83歳の現役美容研究家、小林照子先生の人生論を続けてみたいと思います。
(表紙の写真は、照子先生が考える各年代でした方が良いことの一覧です。)
前2回の記事の続きとなりますので、そちらの記事がまだの方は、こちらからお読み下さい。
https://whitecatinny.com/2018/03/01/83歳の美容研究家が語る人生論/
https://whitecatinny.com/2018/03/02/83歳の現役美容研究家が語る人生のヒント/
出張先の新幹線でたまたま向かいに座った女性。ひょんなことから会話が始まり、偶然同じくコーセー勤務ということが分かり、長旅の道中色々な話をしたそうです。その流れで、聞かれるがままに、網棚のボストンバックに1ヶ月分の出張手当が入っていることを話してしまいました。照子さんが目的地に着く直前に、その女性に促されるがままにトイレへ行き、戻って来る時には、その女性が照子先生のカバンを席におろして、下車が近いからカバンをおろしておいたので、と言われたそうですが、照子さんはその女性が照子さんのカバンのチャックを閉めているところを目撃してしまっていたのです。
おかしいと思ったもののお礼を言って電車を降りてから、お金がなくなっていることに気がついた照子先生。真っ青になり、鉄道公安局に伝えると、犯人はその女性に間違いないし、まだ先の駅まで乗っているから、降りたタイミングで逮捕することを告げられたそうです。
照子さんよりも年配のその女性は、照子さんとは異なって契約社員のような形での勤務形態で、待遇もあまり良くなく、経済的にも苦しかったそうです。そんな身の上話を全て聞いた後だったので、この女性が逮捕されたらその後どのような人生が待っているかを考えて、照子先生は逮捕を見送ることを鉄道公安局に伝えたため、お金が戻ってくることはなく、照子先生の不注意となり、会社へ全額返済することになりました。
毎月の返済負担で一人暮らしも解消して実家へ帰ることになった照子先生ですが、仕事ではステップアップし、社内の美容部員へのメイクアップ講師を引き受けることになりました。驚くことに、生徒の中にはその年配の女性の顔がありました。
新幹線の車内であんなに話が盛り上がったのに、授業中に照子先生とは目を合わせようともしないその女性を見て、犯人は彼女であったことを確信しましたが、黙っていたそうです。そして、その女性は、定年退職するまでコーセーに勤めることができ、最後のクラスで、照子先生の手を握りながら涙を流して「ありがとう」と言ったそうです。その一言が全てを物語っていますよね、と穏やかに語る照子先生は、事件の後、会社への返済で自分がギリギリの生活を強いられているのを見た友人たちから、その女性を咎めなかったことをおかしいと言われたそうですが、「自分が他人のものを取る側でなくて良かったと思った。」と話します。
順調にキャリアを重ね、結婚して娘が生まれて間もない頃に入った海外出張。あなたは大変な人生を歩んできたけれど、30歳になったら明るい未来が開けますと20代前半に占い師に言われた言葉を楽しみに生きてきた照子先生。30歳になってわずか数日後の出張だったので、期待に胸を膨らませて家族と空港へ向かいますが、なんとその道中で、相手ドライバーの不注意による追突事故に巻き込まれてしまい、照子先生が乗っていた車は半分に潰れてしまいました。同乗していた旦那と妹は重症で入院生活となってしまい、照子先生の出張もキャンセルとなりました。
幼い娘を抱え、仕事も続けながら、旦那と妹、病気の義父が入院する3つの病院を駆け回る日々の照子先生。でも、そんな不遇な出来事が、人生が上向くきっかけになったそうです。 (続)