ちょっとびっくりするようなタイトルをつけてしまいましたが、これは、私自身の体験と今までのNY生活で見聞きした話を総合して、私が常々感じていることです。
なお、私のブログは、自力でNYへ渡って生活していくことに興味を持って読んでくださっている読者の方も多いのと、私自身が駐在員ではなくローカル組(ニューヨークの日本人社会では、会社派遣といった形でなく自力で渡米して働いている人のことを、このように呼んでいます。)であるため、この記事は、駐在といった形で働く形態は除き、あくまでローカル組の仕事についての考察です。
冬へ向けて準備をしている(?)近所のリス。
NYにある日系企業には、大きく分けて2種類あります。
①日本の子会社:日本で名の通った企業で、規模も大きいため、会社の拡大とともにNYに子会社を設けているケース。なお、日本の産業を支える製造業は、アメリカに数多く進出していますが、ものづくりには広大な土地が必要なため、製造業関連の会社のアメリカ子会社はNYではなく、地方都市にあります。NYに多い日系子会社は、金融や商社が多いです。その他、最近では、日本でレストランを経営する会社が、NYに進出して和食屋さんを経営しているケースもあります。
②NYで日本人が設立した会社:NYに渡り、自ら起業して、NYで会社を経営している日本人は一定数います。社員を雇うにはそれなりに売上もないといけないので、小さな会社がほとんどですが、現地で無料紙を作る新聞社、補習校、会計事務所や弁護士事務所(主に移民法)などがその例です。
NYで働く形態は、米系企業で就労、フリーランス(自営業も含む)、もしくは上記の①か②となりますが、多くの日本人は①か②を選んでいます。
その理由は、英語のハンディを気にすることがないからです。同僚も日本人が多いので気心しれて仕事がしやすく、そして、何より、アメリカ人と張り合う必要がないので、ある意味ぬくぬくとした環境です。
ウォール街の新たな名所となったfearless girlの像は、有名なブルのすぐ近くにあります。小さいけれど、存在感抜群の女の子。
もちろん、どんな仕事をするかは個人の選択なので、自分が納得いった会社にいられることが一番ですが、私は①か②のパターンを選んでしまうと、NYでの幸福度は大きく落ちてしまうのではないかと、自身の体験から感じています。それは、どうしてでしょうか。
・お給料がとても低い:特に②の場合、「NYで暮らす」ことが目標になっている人がいることを知っている経営者たちは、とにかく薄給でも人が集まるため、お給料は生活ができるかできないかといった最低レベルしか出しません。夢のNY生活を実現したのに、会社からはるか遠いところでルームシェアをして、お金を切り詰めながら生活、といったことになりかねないです。①の場合は、それなりに大手の日系子会社であれば、ある程度のお給料は出してくれますが、同じ職務内容の米系企業よりもお給料は明らかに低いです。また、ほぼ同じ仕事をしているのに、駐在員との待遇差にある時気づいて愕然とする人もいるようです。
・ビザのサポート体制が弱い:②の場合、正直なところ、悪徳経営者も割と多くいるのがNY。ビザサポートをちらつかせて猛烈に働かせ、結局サポートをしなかった、なんていうケースも普通にあります。そういった会社でビザサポートを信じて働き続けてしまった場合、気づいたときには、ビザサポートがないままビザの期限が迫ってしまい、泣く泣く日本へ帰国、ということにもなってしまいます。①の会社の場合、大手企業であればビザサポートはしてくれますが、その先のグリーンカードのサポートとなると、難色を示す会社も多いようです。ビザの延長はしてくれるので、NYに残ることはできますが、ビザは会社と紐付いているので、キャリアアップのために別の会社へ行きたくても、その会社を離れることができません。
・日本の働き方をせざるを得なくなってしまう:こちらのブログでは、「NYで働く」や「NYで異文化体験」のコーナーの記事で、日米での働き方の違いや文化の違いについて、多く書いてきましたが、一般的に、日本人はアメリカ人よりも細かく、労働時間が長いです。日系企業で働いてしまうと、NYにいるのに、日本と同じ働き方を求められてしまい、会社人間になりかねないです。
・アメリカ生活の醍醐味の多くを逃してしまう:日系企業で働くと、NYに暮らしているのにアメリカ人と触れ合う機会が極端に少なくなってしまい、英語の上達もしないし、アメリカ文化やアメリカ人の考え方を学ぶ機会もほとんどなく、結局住んでいるのはNYだけれど、日本にいるのと変わらないことになってしまいます。NY生活の醍醐味の一つは、色々な国の人たちの生き方や考え方に触れることだと思うのですが、日系企業で働くと、せっかくNYにいるのに、そうした貴重な機会を逃してしまいます。
・キャリアアップの機会を逃してしまう:①の場合、日本人以外も多く働いていますが、要職は、日本からの駐在員で占められています。駐在員が直属の上司、という状態だと、駐在の任期が切れてもまた新しい駐在員がやってくるため、自分がどんなに頑張っても、その上の位に昇格することはなく、万年同じ職位に留まりかねません。また、重要事項は駐在員が本社とのやり取りの中で決めてしまうため、蚊帳の外にいるような感じになってしまうこともあります。②の場合は、日本人がNYで作った小さな会社のため、会社内部のしくみが整っていないことが多く、同僚や上司からの刺激は少ないです。ワンマン経営者も多いため、そうした経営者に振り回されてしまうこともあります。
こうした多くの理由から、私は、NYで日系企業では働かないほうが良いと思っています。
いくら能力ややる気があっても、それらを最大限生かせないですし、正当に評価してもらえないからです。
先月久しぶりにMOMAへ。日々の生活に追われてしまい、美術館巡りは、日本からの来客があった時ぐらいになってしまっています。
日系企業で働かない場合の選択肢は、冒頭にも書きましたが、米系企業で働くか、フリーランスとなるか。フリーランスは大変と言いますが、NYでは力があれば、フリーランスとして働くことも十分可能で、私の周りにもフリーランスの人は多いです。その勇気がなければ、会社勤めとなりますが、米系企業に飛び出していって得られるものは多いので、英語を頑張って勉強する意義は大きいと思います。
もちろん、最初から米系企業に就職することはとても難しいので、日系企業からスタートするケースがほとんどだと思いますが、自分がいる環境で自分の幸福度が満たされているかを常に考え、そうでないのであれば、思い切って日系企業の外へ飛び出してみることが、NY生活をより実りあるものにする鍵ではないかと感じています。