NYのおすすめカフェ

NYのチョコレート帝国を築いた男性の栄光と転落、そして華麗なる再起

いつもその前を通る時、キラキラした看板、そして店内から溢れるエネルギッシュな雰囲気に惹かれて、いつか行きたいと思いつつ最近までその機会がなかったのが、ユニオンスクエアから目と鼻の距離にある”Blue Stripes Cacao Shop”というカフェです。

NYではよくあるのですが、工事の足場が組まれたまま、工事の長期化によってその足場がなかなか取れないことも。少し見にくいかもしれませんが、かわいい看板やカフェの明るい雰囲気が伝わってくると思います

 

カフェにしては充実した食事メニュー。一方でレストランと呼ぶにはカジュアル。
一人でもふらっと入れる気兼ねないカフェ兼レストランはニューヨークでは珍しいかもしれません。
そんなこともあってか、休日はパソコンを持ち込んで作業する人、友人たちと談笑する人、犬の散歩のついでに立ち寄る人たちで外の席まで溢れかえっています。

エコ意識が高く、店内飲食の場合は、紙コップではなくマグカップで提供されました。ドーナツはその場で温めてくれて絶品

 

2017年にジャマイカのブルーマウンテンを旅行した際に、チョコレートの生産のためにカカオの実の7割が廃棄されているということを知って衝撃を受けたOded Brennerさんが、アップサイクル(*)の考えを用いて、カカオの実、中の果肉、そして豆の全てを活用するというアイデアのもとに3年の研究の成果を発揮して2022年に開いたのが、Blue Stripes Cacao Shopです。

(*) アップサイクル (upcycle)=リサイクル(recycle)とは異なり、既存の物を使い回すのではなく、さらにグレードを上げて(up)使用すること)

創業者Oded Brennerさんの苗字から、坊主頭の男性の顔のロゴマークで知られているニューヨークで大人気のチョコレートショップ、Max Brennerのことを思い浮かべた方もいるかもしれませんが、Oded BrennerさんはまさにMax Brennerの共同創業者です。しかし、その人生は、知れば知るほどに波瀾万丈。
Blue Stripes Cacao Shopが何となく特別なオーラを放っているのは、Brennerさんが自身の再起を懸けたプロジェクトであるからかもしれません。

Oded Brennerさんをイメージした坊主頭の男性のロゴが今でも目印のMax Brenner。でも、後述するように、Oded Brennerさんは、自身が築き上げたブランドと思わぬ形で決裂してしまったのは、なんとも皮肉な事実です (C) Max Brenner

 

もともとは作家になりたかったというイスラエル出身のBrennerさんですが、母国での4年に及ぶ兵役を終えた後(イスラエルは男女問わず徴兵が義務付けられています)、政府が支援するお菓子職人コースを修了した後、渡仏。パリで6年間パティシエの経験を積みました。

1996年にMax Fichtmanさんと共同で創業し、それぞれの名前の一部をとってMax Brenner(マックス・ブレナー)と名付けてイスラエルで始めた手作りのチョコレートブランドは、瞬く間に世界各地へと広がり、2006年にはマンハッタンの一等地に大きなレストランを開くまでにと成長しました。
上品で適度な甘さのチョコレートはニューヨークには珍しく、私が一番好きなチョコレート屋さんでもあります。

2001年にMax Brennerはイスラエルの大手食品会社へと売却されましたが、Oded Brennerさんはチョコレートコンサルタントとして残り、新しいオーナー企業とも良好な関係を築いていたそうです。しかし、Oded Brennerさんが2011年に自身のチョコレートカフェをニューヨークに開いたことで、Max Brennerの新しいオーナーに契約違反であると訴訟を起こされてしまい、2012年にOded Brennerさんは敗訴。
それによって、競業避止を織り込んだ契約書にサインを強いられ、向こう5年間、チョコレートビジネスへの一切の関与ができなくなると同時に、自身の名前や顔を新しいブランドの宣伝に使用することもできず、期限付きでチョコレートビジネスから追放されてしまいました。

人生、そしてお金の全てをつぎ込んでいたMax Brennerとの関係を失い、自身のキャリアの全てと言っても過言ではないチョコレートビジネスに、5年もの間関与ができなくなったことで、金銭的にも苦労したそうです。

そして、前述したように、2017年のジャマイカでの旅にヒントを得て、2022年に新たに始めたのが、Blue Stripes Cacao Shopというカフェなのです。

通常のカフェのメニューに加えて、カカオの実を全て用いたグラノラやカカオの果肉をコールドプレスしたスムージーなど、独創的なメニューが並びます。当時は幼くて、Max Brennerの創業者として成功を収めた父親の姿を知らないというBrennerさんの娘、Nellieに宛てて、Brennerさんは、当時の思い出を短い文章にし、Blue Stripes Cacao Shopの店内やギフトボックスに散りばめたそうです。

Blue Stripes Cacao ShopはMax Brennerのオーナーが始めたとどこかでちらっと聞いたことがありましたが、調べてみると、驚くような事実と波瀾万丈な人生が浮かび上がってきました。

次回はOded Brennerさんの想いがつまったカカオの果肉を使ったスムージーを飲んでみたいと思います。

レンガの壁を生かした開放的な店内。毎週木曜日の夜にはライブ音楽の演奏もあるようです

 

☆Blue Stripes Cacao Shop
28 E 13th St, New York, NY 10003

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