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世界中で間違いなくここだけ!NYで驚きのバー体験

ニューヨーク生活が14年も超えた今、ニューヨークは東京に次ぐ私のホームタウン。この街での生活に慣れていくにつれ、昔は新鮮だったことも少しずつ日常へと変わり、刺激が少なくなったことを少し残念にも思っていましたが、今週、度肝を抜かれるようなことがありました。

それは、ニューヨーク生まれの親しい友人が、きっと私が好きだろうと連れていってくれたウェストビレッジにあるMarie's Crisis Cafeというところ。

カフェと名がついていますが、地下にあるバーです。

歴史を感じる外観

友人によると、このバーは、毎晩スタッフがピアノを演奏しながらブロードウェイミュージカルの歌を歌っているそうで、観客の多くも一緒になって大合唱していると言うのです。一体どんなところなのかとどきどきしながら、地下の空間に足を踏み入れた瞬間、その熱気に圧倒され、私が好きなニューヨークとは、まさにこのような場所があるからなのだとの想いが込み上げてきました。

旅行で訪れたニューヨークと実際に暮らしてからのニューヨークは全く違うので、一概に比較はできませんが、私にとって特に印象深いニューヨークは、1999年、大学時代に初めて訪れた時のニューヨークです。世界中から夢を追い求めてやって来た人たちの情熱や高い志が充満していることを、街を歩きながらひしひしと感じ、エネルギッシュなこの街で私も暮らしてみたいと、一瞬でこの街に恋に落ちました。

それから911やリーマンショック、さらには未曾有のコロナによるパンデミックと様々なことを乗り越えてきたニューヨークは、色々な意味で大きく変わりました。建設ラッシュに押され、ニューヨークらしい建物は少しずつ姿を消し、パンデミックにより、この街の歴史を背負ってきたような老舗のレストランやショップで店じまいをしてしまったところも少なくありません。

だからこそ、1929年にオープンしたMarie's Crisis Cafeが今も同じ場所で伝統を大切に守りながら毎晩お客さんを迎え入れているのは奇跡とも言えるでしょう。

お酒が飲めない私でも、一晩でこの場所が大好きになり、近所に住んでいたら、毎晩でも行きたいと思うようなMarie's Crisis Cafe。こんな熱気のある場所は、大げさでなく世界中を見渡してもないのではないかと思うような空間です。

この日担当だったスタッフは、とにかくエンターテイナー。数曲ごとにトークも入れてくれるのですが、コメディアンのように笑いをとっていました

ピアノを演奏しながらミュージカルの歌を歌い続けるスタッフは、プロのミュージシャン。ピアノの腕はさることながら、その歌声、そして、テンポの良さには目を見張るものがありました。頭の中がどのようになっているのか分からないのですが、譜面なくして、次々と休みなく歴代のブロードウェイミュージカルの曲を弾き続けながら歌い続けているのです。

さらに驚くことに、観客の中にもプロ級の人たちが何人もいて、スタッフと一緒になって、楽譜も何も見ずに、大声で熱唱しています。

バーの真ん中で演奏するスタッフの周りを取り囲むファンたち。前列にいる人たちは全員、全ての歌を譜面なしで完璧に歌っていました。年齢も職業も様々だと思いますが、どうしてそんな神業のようなことがでできるのでしょうか?!不思議でなりません。

友人によると、スタッフはブロードウェイミュージカルのステージに立つことを目指していた人たちのようで、お客さんの中にもそうした人やミュージカル愛好家たちがたくさんいて、どのような曲にも対応できるそうです。

ミュージカル愛で溢れた人たちが自らの才能をどこまでも発揮して楽しんでいる空間。こんなにポジティブでエネルギッシュな場所は、世界中見渡してもなかなかないのではないでしょうか。

黙々とお酒をサーブしていたウエイトレスの方(写真中央)も突然独唱を開始!

Marie's Crisis Cafeという一風変わった名前はどのようにしてつけられたのでしょうか。歴史を紐解くと、フランス人のMarie DuMontさんが1929年にレストラン兼speakeasy(看板のない隠れバーのことを英語でこのように表現します。禁酒法時代にお酒を公に提供することができなかったため、地下や秘密のドアの裏側でひっそりと営業してたバーがニューヨークには多くあり、今でもその名残で当時のスタイルのまま看板なしのお店もあります)として営業を開始。自身の名前を店名にしたのです。Crisisはという名前は、イギリス系アメリカ人の作家であり"American Crisis"という政治的なパンフレットを発行していたThomas Paineさんが1809年にこの場所で亡くなったことにちなんでつけられたそうです。

この建物自体は1839年に建てられ、モーテル、娼婦の館、バーを経て、1929年にMarie's Crisis Cafeとなりました。Marieさんはこの建物とお店を1972年にある家族へと売却し、そのタイミングで食べ物の提供はなくなったそうですが、いつの時点からこうした大合唱が行われるようになったかの記録は残っていないようです。

入り口からは想像もつかない世界。平日夜でしたが中はほぼ満員。

 

写真からも熱気が伝わるでしょうか。

店内にはあちこちにレインボーの旗が掲げられていて、ここは歴史的にもLGBTQIAの人たちが集う場所であったことがお店のHPでも強調されていました。オープン当初からの伝統を大切に守り続けている様子が随所に感じられ、ニューヨークの歴史の証人になったような気分でした。
そんな一環で店内の動画撮影は一切禁止。OKなはずの写真撮影さえも肩身が狭かったです。

どんなに頑張ってこの場所のことを表現しようとしても、多分完全には伝わらないのではないかと思うほどに、特殊な空間でした。百聞は一見にしかず。ぜひ現地に足を運んでみてください。ものすごい体験ができることを保証します!

☆Marie's Crisis Cafe
https://www.mariescrisiscafe.com/
59 Grove Street New York, NY 10014


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