NYで冬を楽しむ NYで驚きの体験

NYのホリデーシーズンの代名詞、Saks Fifth Avenueのウインドウディスプレイの仕掛け人

日本の皆様、明けましておめでとうございます!
そして、ニューヨークの皆さま、大晦日をいかがお過ごしでしょうか。

NYのホリデーシーズンの聖地とも言えるロックフェラーセンターのクリスマスツリーとアイススケートリンク。

 

11月のサンクスギビングが明けてから新年を迎えるまでの間、NYの街はホリデームード一色。1年の中で街が一番華やぐ時期です。
クリスマスを祝うクリスチャン、ハヌカのお祝いをするユダヤ教徒たち、そして1年を締めくくるにあたって、無事に一年を終えることができることに感謝を示す月でもあります。

そんなお祝いモードのニューヨークのホリデーシーズンの風物詩と言えば、ロックフェラーセンターのクリスマスツリーでしょう。
そして見逃せないのが、5番街の見事な装飾。毎年、5番街沿いのお店がこぞってホリデー仕様のきらきらのウインドウディスプレイで街全体を華やげいます。その中でも、誰もが注目しているのが、アメリカを代表する高級デパート、Saks Fifth Avenueのホリデーディスプレイと言っても過言ではありません。デパートの壁面全体を使ったライトショーに加えて、ウインドウディスプレイもホリデー仕様。私を含め、毎年テーマ性あるディスプレイを楽しみにしている人が多いのです。

今年、ありがたいご縁で、ウインドウディスプレイを手がけるクリエイティブ集団を取材する機会に恵まれ、夏に「5番街の高級デパート、Saks Fifth Avenueを支えるアーティスト集団」という記事を公開しました。その記事内でも触れましたが、彼らが、ホリデーシーズンのウインドウディスプレイも担当しているのです。この天才クリエイティブ集団を統括するマネージャーのMateoさんが、年末の忙しい中、このブログのために、なんと、単独インタビューに応じてくださいました。それも、彼らが手がけたウインドウディスプレイを1つずつ解説してくださるというびっくりするようなプライベートツアースタイルで!

私が一人で参加するのはもったいないような豪華ツアー。
今回と年明けの記事で、その詳細をお伝えしたいと思います。

まず最初にウインドウディスプレイのお話をしたいと思います。
アメリカと日本では、ウインドウディスプレイの位置付けが大きく異なっています。ウインドウディスプレイはそのお店を象徴するもの。新作やイチオシ商品を紹介する良い機会でもあり、アメリカでは、社内にウインドウディスプレイの専門チームがいて、彼らが別のチームと連携を取りながら、ディスプレイを考えて設営するのです。

ウインドウが体現したいイメージの具体化、イメージに合った洋服や小物の選定、マネキンの決定、舞台の制作から照明にいたるまで、私たちが目にするウインドウの全てを担うのがウインドウディスプレイのチームです。チーム内では役割が明確化されていて、全てが分業で行われていますが、そのチームを統括するのが、私がお会いしたMateoさん。さまざまなスキルが要求される特別なポジション。それも、アメリカを代表する高級デパートのクリエイティブチームを統括しているのがいかにすごいことかは、容易に想像できるのではないでしょうか。

Saks Fifth Avenueの今年のウインドウディスプレイのテーマは"Brilliant"。一人ひとりがそれだけで「素晴らしい」存在である、ということを多様な人種によるマネキンで表現しています。何を身につけているかではなく、その人自身の内にあるものに気づきそれを大切にしてほしい、というMateoさんの強い想いが込められたディスプレイ。

5番街のセントパトリック教会の南側の一等地に構えるSaks Fifth Avenue。ホリデーシーズン限定で、夕方から壁面全体のライトアップショーも行われます。

 

人種のるつぼとも言われるニューヨークの街は、そこに住む人たちの人種も宗教もさまざま。そして、世界のあらゆるところから訪れる人たち。多様性の象徴とも言えるこの街で、全ての人たちが"inclusive”な社会を、というメッセージも今年のウインドウディスプレイには込められていて、Mateoさんが1体ずつ丁寧に選んでいったという40体ものマネキンは、肌の色もスタイルもそれぞれ個性的。

"inclusion"は、includeの名詞形。私が以前勤めていた会社でも、inclusionを会社のスローガンの一つに据えていましたが、それぐらい、アメリカでは、大切な概念です。人種、宗教、性別、年齢が違っても、周りに受け入れられ、帰属意識を持てる社会の実現は、これからの時代、さらに求められることでしょう。

Inclusionを強調するMateoさんご自身が、それを体現しているかのような温かいお人柄で、穏やかな口ぶりの節々に、仕事への情熱とプロ意識を感じました。ありがたいことに、夏のこちらのブログの記事をすごく喜んでくれて、旦那さんが記事を印刷してみんなに見せたり、Mateoさんも家族や友人たちにとリンクを送ってくれたそうで、なんと日本語のブログの記事が、アメリカの西海岸、さらには国境を飛び越えてコロンビアまで届いたそうです。

それでは、Mateoさんの解説とともに、ディスプレイを見ていってみましょう。
ホリデーディスプレイは、Center 6と呼ばれる正面の6つとその左右に展開するファッションウインドウの2つに大きく分けられます。Center 6は毎年アニメーションが使われ、大人も子供も楽しめる工夫がなされています。Mateoさんが全てを手がけたファッションウインドウからご紹介します。

30もあるウインドウの一つ目は、Mateoさんも私も一番のお気に入りのウインドウから。

満面の笑顔のMateoさん。小さい頃からファッションショーをたくさん見て育ち、NYのファッション大学で自身の才能に磨きをかけたMateoさんは、たった31歳で要職に!Brilliantのテーマそのものとも言えるこの女性。マネキンと思えないほど躍動感に溢れているのは、細部までこだわり抜かれているから。人間の髪の毛を使い、ドレスと合わせたヘアとメイクアップは全部Mateoさんの手仕事です。

Brilliantのテーマのもとに統一感がありながらも、一つ一つのウインドウが個性的。衣装だけでなく、ヘアやメイク、小物、さらには仕草までお楽しみください。このウインドウの見どころは、右の女性の髪の毛。大量の爪楊枝を加工してできています!(写真提供:Mateo ブランド:Balenciaga, Rick Owens, Dries van Noten)

このウインドウの私のお気に入りは右の女性。しなやかでありながらも強さも持ち合わせたその容姿が美しいです。アクリルでできた繊細な床。そこを傷つけないように、マネキンの搬入も慎重に行われるそうです。ヘアとメイクで5ー6時間。それに加えて、1つのウインドウの設営だけで10時間もかかるというウインドウディスプレイ。マネキンを固定するためのワイヤーの設置は、設営の中でも大変な作業の一つだそうです。細部までのこだわりが、写真からも伝わると思います。(写真提供:Mateo ブランド:Paco Rabanne, Nensi Dojaka, Rick Owens)

こちらは少し奇抜な女性たち。日本のアニメが好きでよく見ていたというMateoさん。特に手前の女性からは、大人なスタイルの中にもアニメの要素を感じます。Mateoさん自身が大人になっても忘れない自身の中にあるファンタジーもウインドウディスプレイで表現しているそうですが、そんな言葉がしっくりくるこのウインドウ。かなり独特のスタイルでありながら、あまり浮いたように感じないのは、ここがニューヨークだからでしょう。(写真提供:Mateo ブランド:LaQuan Smith, Isabel Marant, Mach & Mach)

一つ一つのウインドウも圧巻ですが、こうしたウインドウが連なっている様子は豪華絢爛。

後編では、センターの6つのウインドウを中心にインタビューの後編をお伝えしたいと思います。
また、Mateoさんからこのブログの読者の皆さんにもメッセージをいただきましたので、そちらも公開します!

 

(カバー写真提供:Mateo ブランド:Christian Cowan, Pamella Roland)


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