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イギリスを代表する美容ブランドLUSHの英断

数日前、驚くべきニュースが飛び込んできました。
それは、イギリスを代表するボディケア商品、特に色鮮やかなボール型のバスボムで知られるLUSHのSNSから完全に撤退するとの発表。

色あざやかで元気な店舗が人気のLUSH。(c) Culture map

 

オンラインショッピングの台頭とともに、SNSを使ったマーケティングは今や企業のマーケティング戦略の中核。
より検索の上位に行くようにとSEO解析を行い、インスタグラム、そして近年ではTIKTOKを使った商品のPRは必須となっていました。

そしていつしか、フォロワーの多さがその人、そしてその会社の有名度を測るものさしとなり、「リア充」、「インスタ映え」という言葉が生まれたように、人々はこぞって日常生活の中に「非」日常を作り出しては、全体の中のたった一部分のきらびやかな世界を巧みに切り取って、発信するようになっていったのです。

事務所に入っていてもそんなに名が知れた訳ではない女優さんよりも、インスタのフォロワーが多い一般人の方が有名人になったりという下剋上、そして、商品の良し悪しよりも、フォロワーが多い人が紹介していれば自然と「良いもの」に見えてしまう、といった虚像をSNSが作り出してきたことも事実です。

SNSの功罪は随分前から指摘されていると思いますが、重要なマーケティングツールになっている以上、どうすることもできず、SNSに左右されてきた人、そして会社は多かったはずです。

そのような現状に声をあげたのが、LUSH。
SNSがティーンエイジャーたちの精神状態に悪影響を与えていることに警鐘を鳴らしたLUSHの共同創業者、マーク氏。
フェイスブックの内部告発で、10代の若者たちにSNSが及ぼしている影響の重大さを認識し、「これは彼らの捜査結果であり、彼らは見て見ぬふりをしているが、自分たちはそのプラットフォームへ若者たちを呼び込んでいて、もはや選択の余地はない」と今回の決断の過程をマーク氏は語ります。

本日のLUSHの公式サイトのストーリーには、「どこか別のところに」という投稿が。

 

マークさんが奥さんを含む5人の仲間とLUSHを創業したのは1995年のこと。
それ以降、ぶれない企業理念と徹底した商品開発に全霊を注ぎ、世界規模のブランドへと成長。

LUSHがSNSを辞める決断をしたのは今回が初めてではありません。
2019年、マーク氏の息子で会社のチーフデジタルオフィサーであるジャック氏はアルゴリズムに操作されているSNSに危機感を抱き、会社としてのSNSの利用を停止しようとしましたが、パンデミックになりオンラインでの販売が唯一お客さんとつながる手段となってしまったため、社内からの反対もあり、SNSのアカウントは継続されました。

しかし、今回のマーク氏の決断より、ブラックフライデーというアメリカで最も大きなセールの初日に、LUSHの公式アカウントは終了となりました。アカウントは残ったままですが、6万人もフォロワーがいるおおもとの公式サイトに残されたのは、"Be somewhere else"たった9枚の投稿。そして、その投稿には、SNSをスクロールするのではなく、自分のために時間を使いましょう、というメッセージが書き込まれています。

LUSH公式サイトの投稿。それ以外の過去の投稿が全て削除されているのも衝撃。

 

また、LUSHの公式HPには"Lush Anti-Social Media Policy"が掲載され、お客さんとは第三者に不必要にコントロールされることなく直接繋がりたいこと、注目を集めるためのネガティブな内容やフェイクニュース、極端な視点で利用者を狙うアルゴリズムを使わないプラットフォームを好むこと、などが掲げられていて、今後お客さんとのコミュニケーションに使うプラットフォームについては時とともに変化するけれども、ここに掲げた考慮事項は常に考慮するという文章で結ばれています。

LUSHと言えば、私が日本で社会人生活を送っていた当時大きなブームを迎え、その明るくて楽しい色合いはギフトにも喜ばれ、また、手書きのボードでアットホームな店内にはいつも活気があふれていたことを思い出します。

LUSHの英断は、フォロワーやいいね獲得に躍起になり、会社としての本来のビジョン、伝えたい商品があることを忘れかけてしまっている人々が増えている今の時代に、一石を投じるとても大きなものだと思います。

変化の早いSNS業界。今後、どのように変貌を遂げるのか、また、どのような新しいプラットフォームが生まれるのか分かりません。きっとLUSHが利用を停止したSNSの多くは、もともとはシンプルに同じ趣味の人、嗜好に合った人たちを繋げるコミュニティーとして生まれたと思いますが、規模が大きくなるにつれ、欲が欲を呼び、本来の目的からはかけ離れた姿になってしまったのではないかと思います。

LUSHのニュースを他の企業はどのように受け止めているのか、今後注目していきたいです。


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